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『悪い夢』――他人事ではない、少女の話


 ――それはきっと、誰もが身に覚えのある「悪い夢」。


 主人公の少女はある日、なぜか学校に行けなくなってしまった。

 別にいじめにあっているわけじゃない。特別辛いことがあったわけでもない。けれど、友達とは趣味が合わないし、価値観があまりに違いすぎたりもする。周りと少しずれている自分が嫌で仕方がない。

 きっかけは、本当に悪気のない、些細なこと。

 けれど、少女にとっては、それはあまりに大きすぎることだった。


 ある日、Twitterの相互さんが『悪い夢』という小説を投稿した。私はそのことに気づいた時、すぐにこの小説を読んで、そして。

 読み終わった時、この小説のタイトルがすとんと腑に落ちたのが分かった。

 ――ああ、私はたしかに、こんな「悪い夢」を見たことがある。この少女は、私の心の中に住んでいるのだ。いや、自分だけではなく、きっと誰の心にも存在するのだ、と。

 個人的なことになるが、私も「変わり者」である。いつからかはもう覚えていないが、いつの間にか「自他ともに認める変わり者」と自称していた。周りと価値観は合わないし、友達のグループに所属したことは一度もない。一人でいるのは好きだけど、ずっと一人でいることには耐えきれない。様々なグループに割り込んでいってはそれなりにたくさんの友達と仲良くなって、けれどグループのメンバーではないから多少の疎外感を覚えたりもした。だから噂話にはとんと疎い。その交友関係の築き方は今も変わらない。

 だから、主人公の少女に共感しやすかったのかもしれない。

 私の場合は。

 けれど、この物語は誰の心にも届くような気がしている。

 だれしも、ふっと力が抜けて動けなくなってしまう瞬間が、些細なことの積み重ねがいつの間にか大きな疲れになってしまっていることが、あるのではないだろうか。

 主人公の少女のように、逃げという手を選んでしまいたくなる瞬間があるのではないだろうか。

 作者名をわざわざ変えて(相互さんが小説を載せた「小説家になろう」では、小説を投稿する際、サイトに登録している名前とは違う筆名を設定することができるようになっている)投稿したのも、名前を作品の一部として利用したかったのでは、と思ってしまった。実際のところどうなのかは訊いていないので、機会があれば直接感想を伝えるとともに、尋ねてみたい。いや、それは野暮だろうか。



 ――You Somewhere『悪い夢』(小説家になろう)