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夢小説らしきもの

めくれあがってゆく感覚により目を覚ました。勤め人としての本能が蘇ったのは幸運であった。今は何時?朝の10時。

冷や汗がぶわりと腋の下から流れ出る。今日が日曜で仕事が休みであるという事実にはとっくのとうに気がついていたが、背中に張り付いた唐辛子入りのスライムを剝がそうとするときのような不快感は拭い去れない。

最近馬鹿げた夢を見る。夢ならばいつも見ているのだが、最近の夢は違う。戦国時代の甲冑を着た女性が並んでいる。まるで発売前のアイフォンを手に入れるために徹夜して並ぶ人のような気怠さと期待感を持った瞳で目の前の暗黒を座った目で見つめている。あ、あ、そこへ行ってはダメだ、という言葉は声にならない。声がかすれて届かないし、音一つ聞こえない透明な空間の中に自分はいるらしくそちら側には行けない・・・・・・・・・・

空が真っ赤で、美しいなんて思ってぼおっと見上げていると、視野が妙にぼんやりとしてくる。なんだろうおかしいな、おや、これはさなぎだ自分はさなぎになっているでもなんでだろうなそうか今日はクリームパイの日縄跳びいたちが僕たちを食いに来る日だ、どうしよう。自分は甲冑を身に着けている。ジャンプすると地面にはいつの間にか井戸の穴がぽっかりと開いており、ごうごうとした空気のかたまりが耳たぶに絡まりつき舐めつけて溶かしに来る。耳が溶けるのは縁起が悪そうだなと思いながら僕は井戸の底を目指してスーパーマンになりそのまま液体の中へ飛び込む。ふわりという音がして液体はその実液体ではなく、ゆらゆらとしたサランラップみたいな水蒸気の膜でありやはり底はないずっと落ちてゆく。

今まで底だ底だと思っていたものは実は膜であり造作ない手刀で真っ二つに引き裂けるほどのくだらない障壁だったのだ。このことが示唆することは何だろう?俺は多少まじめに考えてみることにした。甘い香りといい胸にちくちく来るさつまいもの食後感のようなものが迫りくる予感がして怖い。だが怖いと言うのはどういう感情だろうそれは本能だろうか。いや、本能ではなく社会的な要請であり命令なのだなんて考えていると目覚めの時は近い。面の皮がめくれあがってゆく。今は何時?朝の8時。

いつもの部屋よりもやや色感がくすんで見えるので今日は灰色の朝なのだろう。俺はトーストを食いインスタントコーヒーで流し込み電車に乗りに駅に向かう。



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