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やがて終わる孤独

雪だるまを作った話を書こうとしたのである。




徹底的に雪かきをする。シャベルがすり切れるまで掘りまくる。やがてうずたかく積み上げれられた雪の中から、あら不思議、何かしら孤独な鐘の音がなり、いつぞや世界は夢の中、自分は真っ白な雪原にいる。「ここはどこ?」聞いてみても返事などあるはずもなく、ひたすら「雪だるまを作らなければならない」という強迫観念に駆られる。いつの間にか自分は先ほどぶん投げた雪の塊を素手で触り、真っ赤な手で一生懸命に固めて「芯」を作る。そして転がす。真っ白で官能的なうねりの雪原、その上に一本の線を引いてゆく。その線はどんどん広くなる。彼は「芯」を転がし、その容積をじゃんじゃん肥え太らせる。やがて成長した胴体、彼の作り出す生命の、冷たい心臓の響きが聞こえたような気がした時、彼は、木の枝を胴体に突き刺す。たかが木の枝、と侮ってはならず、これは生命が世界に影響を及ぼす媒体となるもの、つまり「手」である。そして彼は、その「手」のちょうど真下にある、いわゆる「わきの下」の部分から雪の塊を抉り、再び真っ赤な手でちんちんに固めるのである。官能的な雪原にまた一つ、太さの不均一な線が描かれる。「頭」が載せられる。そして飽きが来る。春になれば消えてしまう、期限付きの官能、やがて終わる孤独、吹きざらしの雪原に、たった一人ぽつんと立ち、母なる太陽が己の身を溶かすまでじっと待ち続ける、健気で愚かな生命の誕生。彼は懐から取り出したつるつるの石を、「目」と「鼻」に嵌める。ここにきてようやく、その「生命」の個性が現れる。どことなく悲しげで、それでも楽しさを繕っている顔。大抵の雪だるまが、そんな顔をしているように思える。やあ、こんにちは。僕を作ってくれてありがとう、なんて言うはずはないのだけれども。帽子はない。バケツもない。彼が消えて無くなる時、その禿げ頭から溶かされていくだろう。それでよいのだ。人間が頭から参っていくのだ、なんてブツブツ呟きながら、コーンポタージュでも飲もうと帰ろうとしたとき、目が覚めた。網膜に映るはいつもの光景、だが目の前に雪だるまがある。だけど、未完成だ。彼には「手」がない。「手」を与えなければとその辺にある枝を拾い、導体に突き刺すと同時に、ぐしゃりと音がして雪だるまは崩れてしまう。気温は6℃だった。





人間が雪だるまを作る時のモチベ―チョンと言えば、こんなもんである。


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