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京都の大学院生が「ガザの声を届ける栞」を作った理由

 はじめまして。栞プロジェクトの齊藤ゆずかと申します。明日、2024年7月1日から、「ガザの声を届ける栞」の販売を開始します。

 このnoteを読んでいるのは、わたしたちの栞を買ってくださったか、あるいは、パレスチナ・ガザに少しでも関心をもっている方かと思います。栞が手元にない方のために、わたしたちがつくっている栞の写真をまずは掲載します。

栞プロジェクトでつくった栞

わたしとパレスチナ問題

 わたしは、京都の大学に通う大学院生です。4年前の2020年、大学1年生のときに、パレスチナ問題を中心に、国際問題について学んだり発信したりする団体「SHIRORU」を立ち上げました。

 パレスチナ問題を初めて知ったのはさらにさかのぼること、高校2年生の秋でした。当時札幌で暮らしていたわたしは、札幌在住の医師・猫塚義夫先生が団長を務める「北海道パレスチナ医療奉仕団」(以下、「奉仕団」)の活動報告会を聴きに行きました。「奉仕団」は10年以上にわたり基本的には毎年、医師や看護師、弁護士、教師などのメンバーでガザ地区や東エルサレムを含む西岸地区に赴き、医療支援や子ども支援を行っています。帰国後は報告会を開催し、ガザ地区で行われている占領の実態について伝える活動をされている団体です。

 報告会を聴きに行ったのは偶然、友人に誘われたからでしたが、そこで知った内容は、本当にショックでした。初めて知ることばかりでした。種子島ほどの面積の土地に閉じ込められ、自由に出入りができない。医療物資も燃料も足りず、電気は1日数時間しか使えない。壁で囲まれた「天井のない監獄」へは、ミサイルが降り注ぐ夜もある。人間らしい生き方や尊厳を踏みにじられ、自殺を選んだり、ドラッグに手を出したりする若者がいる。

 わたしは、ガザで暮らす人々として紹介された写真のなかの男性と、目があったことが忘れられませんでした。わたしは17年間、パレスチナのことを、ガザで起きていることを、まったく知らないでも生きてこられてしまいました。きっと、これからも、そうなんだと思いました。でも、一度知ったからには。自分たちの無関心によって、世界から置き去りにされていると感じているひとたちがいるということ。何かしたい。そうしないと気が済まない、とわたしは思いました。

 大学生になって、コロナ禍の中で学生生活が始まりました。授業は全部オンライン。でも、おかげで学生はzoomを使うことができました。札幌に住む猫塚先生のお話を、京都の、さらには全国の大学生に聴いてほしい、と思い立ったのはちょうど4年前の初夏のことでした。自分の心を動かした猫塚先生の言葉が、もっと多くの学生に届いてほしいという思いで、zoom講演会を企画しました。

 講演会が終わった後も、一緒に企画したメンバーが申し出てくれたおかげで、さらに活動を続けることになりました。そうしてできたのが「SHIRORU(しろる)」でした。「しろうとする」(その問題に対して素人であっても、知ろうとすれば何かを変えられる)をモットーにするチームです。ご縁があって、ガザ地区をはじめとするパレスチナに暮らす学生たちと繋がることができ、オンラインで交流会を行ったり、SNSでやりとりをしたりしてきました。

 2023年10月7日からの出来事は、もちろん10月7日の出来事を起点にはしているけれども、それまでもずっと占領下で暮らしてきた人たちが、さらに自分の生を、人間らしさを、踏みにじられているということだと考えています。以前から活動を行っていた者として、取材を受けたり、文章を発表したりする機会をいただきました。でも、それ自体は本当にありがたいことではあるのですが、活動が好意的に報道される裏で、複雑な思いもありました。連絡を取っていたガザの友人からは、大切な人を亡くしたり、自身も命の危機にさらされたりしているという内容のメッセージを受け取っていました。わたしは当事者にはなれません。四六時中、パレスチナのことを考えて行動しているわけではありません。でもカメラに映るのは、テレビや新聞で報道されるのは、ガザで絶望の淵に立たされている友人ではなく、わたしなのです。

なぜ栞をつくったのか

 葛藤を抱えながらも、昨年以来、パレスチナへの人々の関心は高まっていると感じています。5月ごろでしたか、NHKのクローズアップ現代、ゴールデンタイムの番組でガザの人々の声が報道されました。SNSでは、AIが作成した画像をシェアして、ガザへの関心を高めようとする動きがありました。わたしの身近な家族や友人も、それらを見ていました。わたしの知る限りでは、パレスチナへ日本の人々がこんなに目を向けていることはありませんでした。

 しかし、SNSを見ていると、そうした人々の関心のもち方に、現地のパレスチナ人や、長年パレスチナ問題について活動してきた日本人が、複雑な思いをもっていることもわかりました。「AIがつくった、すぐにシェアできてしまう画像をシェアして、パレスチナのために何かしたつもりにならないでほしい」「もっとパレスチナのことを知ろうとしてほしい」——。

 NHKの番組のコメント欄には、「私たちにできることは何ですか」という内容のコメントも見かけました。気になる。何かしたい。けれども、何をしていいかわからない。デモに行くのは腰が引ける。多額の寄付は難しい。こうした人々に、「いや、デモに行かないと」と言うことは、パレスチナ出身で日本で暮らす人たちが、家族や友人の安否を案じながら懸命に声を上げていることを考えると、もちろん正しいことだと思います。でも、パレスチナ問題に関心をもち、何か行動する人を少しでも増やしたいと考えるわたしは、より多くの人を巻き込めるかもしれない方法、しかも、パレスチナに思いを寄せられるような方法を提案することにしました。

 それが、栞プロジェクトのはじまりでした。栞は1枚100円で、原価を除いた1枚当たり80円(※販売手数料0のイベントなどで販売した場合)が、北海道パレスチナ医療奉仕団に寄付されます。北海道パレスチナ医療奉仕団については先でも紹介しましたが、以下のウェブサイトから活動内容を確認できます。

 栞にはガザで暮らす、当時20歳の友人から昨年もらったメッセージの一部「わたしたちの声になってください」を印刷しました。背景には、ガザ在住のパレスチナ人ジャーナリストの方からいただいた、昨年の10月7日よりも前の、ガザの海の写真を使っています。ガザの人々にとって海は、たとえ汚染されていても、心のよりどころでした。写真には、漁をしている男性が写っています。彼がいまどうしているのか、わかりません。

 ガザのひとたちが大切にしてきた風景や、望んでいることを、栞を通してたくさんのひとに知ってほしい。1枚当たり80円の寄付額は、決して大きいものではありません。でも、たくさんのひとがこれを買ってくれたら。それだけ、ガザのひとたちの思いが、言葉が、広がるということになります。だから、お財布に余裕のある方は、栞を複数枚買って、配ってもらえたらと思います。栞の販売場所を提供したり、栞をSNSに投稿したり、栞を使ってパレスチナについて知ることのできる本を読んだりすることは、さらなるアクションになります。

 このnoteのアカウントでは、おすすめの本の紹介や、みなさんが読んだパレスチナ関連本の感想紹介などを行っていきます。パレスチナについて本で知ったよ、感想を紹介してもいいよということがありましたら、bookmarkforpalestine★gmail.com(★を@に変えて送信ください)までご連絡ください。もしも、栞を(お店やイベントなどで)販売してもいいよ、という方がいらっしゃいましたら、同じ連絡先までお願いします。

 なお、このプロジェクトは高校からの同期であるメンバー・大箭朱音の協力なくしては実現にいたりませんでした。デザインは射水暉介に担当してもらいました。両者をはじめ、アドバイスや販売手伝い、販売会場の提供などの形で協力いただいた全ての方に感謝申し上げます。

 ガザの人々を踏みにじる世界に、一緒に石を投げてみませんか。

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