「film noir」Maison book girl

意味ないんだよ全て。最後の言葉。
思い出せない程忘れてゆくの。
手を繋いだ場所は雨の水色。
2人乗る電車はどこに迷い込むの?

伝えたい事なんて1つもないの。
小さな手のひらをただ握ってた。
未来なんて無いのは知っていたから。
窓に見える景色、黒と虹色。

錠剤を飲んで煙の中。
涙も涸れた、道路の上。

透明な君を抱きしめてたんだ。
疑心暗鬼の中、それはどこにあるの?
消えそうな君を、抱きしめてたんだ。
疑心暗鬼だけがそこに残る秘密なの?

濡れた髪の匂い忘れたくても、
そこに残る影が何か語るの。
虹色と黒色混ざってゆくの、
見たことも無い色僕を消してく。

正しい事は森の奥へ。
逃げてばっかりで。この白い部屋で。

折れそうな君を、抱きしめてたんだ。
疑心暗鬼の中、傷をつけた。朝に。
それでもずっと、抱きしめてたんだ。
疑心暗鬼だけがここに残る記憶なの。


Maison book girl 初音源「black」収録、その後「bath room」にて再収録。

film noir(フィルム・ノワール)は、第二次世界大戦後の退廃的な犯罪映画群を指す用語。noir=黒。

イントロ〜Aメロ 6/4拍子
Bメロ〜サビ 4/4拍子

イントロのメロディー裏で鳴っているマリンバが可愛らしい。エレキはあくまで補助的な役割で使われており、シリアスながら全体を通して重苦しい印象が無く耳に心地よい。

まるで少女がこちらに語りかけているような口語体の歌詞が特徴的。句点と読点が至る所に置かれ、途切れ途切れに内面を打ち明けるようだ。「〜の。」「〜なの?」といった語り口に未熟な少女性を感じさせる。

特徴的なモチーフ
色。電車。窓。錠剤。煙。涙。影。正しさ。部屋。森の奥。匂い。傷。朝。

特徴的な詞
「見たことも無い色僕を消してく。」

窓の外に見える、黒と虹色の景色。それらが混ざって禍々しい色を形成し、記憶から僕を消してく。思い出せない程忘れても、濡れた髪の匂いを忘れられない。抱きしめていた君は消えて、全て意味がなくなって、疑心暗鬼だけがここに残る記憶。

Maisonbookgirlの楽曲に共通するのは、怒りも主張も無くて、現象と記憶、それらに付随する悲しみがあるだけ。
ただそこに存在する閉じた世界は、とても優しくて、美しい。

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