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レビュー「絵本のなかの動物はなぜ一列に歩いているのか」
2024年もあっという間に終わりそうです。私にとっての今年は、誕生した子どもの「子育て」の1年だったと思います。
読書会を運営している者として、我が子にも「本好き」になってほしい。独りよがりではありますが、生後2ヶ月が経つころから、朝や夜に絵本を読んであげる時間を意識的に行ってきました。正確な数は記録していませんが、おおよそ50冊以上は読んだと実感しています。
そんな子育てをする1年であり、絵本に多く触れ合う1年だったからこそ、今回は絵本論について書かれた「絵本のなかの動物はなぜ一列に歩いているのか〜空間の絵本学〜」(勁草書房出版2024 年 矢野智司・佐々木美砂)を紹介していきます。
◻️どんな本
タイトルにあるように、動物が一列に歩く理由を紐解き、絵本の特徴について論述されている1冊です。
◻️印象に残った点ベスト3
①均衡回復型の絵本
=子どもは「行って帰る」本が好きだそう。旅に出て、トラブルもあるけれど最終的にはスタート地点に戻ってくるストーリーは絵本でよくありますね。本書ではこうした行って帰ることが子どもにとって安心する効果があり、均衡回復型の絵本であることを定義しています。
また、道中、色々な人や動物に出会う展開はお決まりだったりもします。それは、こうした均衡回復型絵本においては鉄則であり、ページごとに新しい展開(新たな空間)を作る必要性があるので、さまざまなキャラクターを登場させ積み重ねていくようにする必要があると書かれています。
例えば積み木に置き換えると、腑に落ちると思います。私の子どもは発達上未だではありますが、子どもは積み木で、倒れるけれども、繰り返し繰り返し積んでいきますよね。この「倒れる」という要素も大事だそうです。次の②で
紹介していきます。
②溶解する体験
ー世界そのものへと全体的にかかわり、世界に住み込み、世界との連続性を体験ー
(本書106項より引用)
作者は本書において、上記を溶解体験とし、主張しています。先ほどの①の積み木で遊ぶ子どもの状態で表すならば「積み木が倒れる」ということに、子どもは溶解体験を味わっているそうです。
上記の引用文は堅苦しいですが、私なりに解釈すると、つまりは没頭している状態ではないかと考えています。本書においても、単純に生き生きとした現在を生きていくというような状態という言葉で説明されています。
タイトルの答え合わせになりますが、溶解体験を引き起こすための仕掛けのために「動物が一列に歩く」という構図を取っているということを理解できました。
③子どもと大人の絵本の捉え方の違い
ー大人が絵本を読むとき、大人は絵本を物語としてとらえ、そこから筋や主題や意味を読み取ろうとします。(中略)子どもは絵本のなかで、均衡の回復と崩壊というダイナミックな絵本世界での転換を体験しているのです。つまり、子どもが反復するのは、物語の意味ではなくこの体験全体なのですー(268項より引用)
本記事冒頭において、私が我が子に絵本を読む理由として「本好き」になってほしいと説明していました。しかし、実は「賢くなってほしい」「思いやりのある子になってほしい」という下心が裏にありました。まだ0歳児なのに、英語のアルファベット本や数を学ぶ系の本だったり、優しい気持ちが芽生えるような物語を読み聞かせしていたことが一時期ありました。いわば私(大人)にとって意味のある選書をしていたと言えます。
そんな子ども置き去りの絵本読み聞かせの最中で、この一文は、目にウロコでした。
本書においても、絵本は単に教育するメディアではないことを記述しています。
◻️まとめ
本書を読むまで、絵本は色んな動物が出てきたり、最後は全員集合してにこやかだったり「おやすみ」という一文で締められていたり「ありきたり」だなと思っていました。しかし本書の絵本論によると、そうしたお決まりパターン(本書ではマンネリズムと記述されています)は子どもが純粋に楽しめる溶解体験を生み出すための必要不可欠な構成だからなのだということが分かりました。ちなみに、動物がやたらと登場する理由も説明されていますよ!
本書において、絵本は玩具であると記述されていました。積み木のように没頭して遊べるものであるからこそ、子どもは楽しめるのだと。③でも書きましたが、教育目的に囚われるのではなくオモチャのように楽しめる選書をする(0歳児は選書が困難)ことで、「本が好き」になれるよう我が子と接していきたいと思っています。