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爆発的な拡大のメカニズム

自身のアイデアやプランをいかに他者に伝えればミッションを達成できるのか、と私が悩んだときに読み返すバイブルをご紹介したいと思います。

アメリカのジャーナリストであるマルコム・グラッドウェル氏は、一躍ベストセラーになる現象や口コミの伝播など、社会においてすべてが一気に変化する劇的な瞬間を「ティッピング・ポイント」と呼び、そのメカニズムを豊富な事実をもとに解き明かしています。

私が初めて読んだのは20代後半でテレビ番組のアシスタントをしていた時でしたが、日中は雑用とオペレーションをこなし、夜中に企画書を書いてはテレビ局の担当者に提案して却下される日々を過ごしていました。

他者の思考にある「見えないハードル」を越えるには何が必要なのか、と苦悩していたなかで出会ったのがこの本でした。

一気に流れに乗る発想やメッセージの裏には、実は「3種の人」が関わっているといい、

1)媒介者(Connector)
→交際範囲が平均的な人の5〜6倍も広く、まるで切手を集めるように知り合いを増やし、交際の義務をいとわない
発想や製品が「媒介者」に近づくほど、力と機会が増える

2)通人(Maven)
→情報の専門家であり、よいものごとや方法を知ったら他人に教えたがる
口コミの起点となる知識と社交的技術を備えている

3)セールスマン(Salesman)
→納得できない情報に対し、説得する技術を持つ
大衆の感情を模倣することに長けている

という3つの役割の人たちを辿ることで、劇的な瞬間が訪れるそうです。

それまで私は「企画書」という1つの書類に意識が集中していましたが、社会に広がるメカニズムと関係性をイメージしながら企画提案するスタイルに変え、ディレクター業のキャリアが始まりました。

さらに私が最も参考になり、現在もビジネスに活かしている考え方・メソッドがあります。

この本の著者は「粘り」と呼び、情報を記憶に残すための単純かつ決定的な工夫、と定義されています。

そんな「粘り」の事例として、1960年代にある社会心理学者が行なった「恐怖の実験」を紹介されていました。

実験内容は、大学生に「破傷風の予防注射を受けるよう説得できるか」というもので、破傷風の恐ろしさと予防接種の重要性を記載したパンフレットを渡し、希望者は大学内で予防接種を受けられることを伝える、というものです。

Aグループ:恐怖度の高い表現のパンフレット
Bグループ;恐怖度の低い表現のパンフレット

という2グループに分けて渡したところ、どちらも予防接種を受けた学生は「3%」に過ぎなかったといいます。

そこで予防接種を受けられる場所と時間を記した地図を添付したところ、接種率は「28%」に跳ね上がったそうです。

情報提示の際、あからさまで大げさなものは、実はあまり記憶に残らない。

一方、さりげなく有意義な変更を加え、抽象的な知識から個人的なアドバイスへと変化させることで、記憶に「粘る」ようになり他者の行動を促すことができる。

このテクニック、プレゼン資料やパンフレットなどで活用してみていただけたらと思います。

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