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良い仮説を立てる
2007年に出版された本ですが、数学の持つ力と人間の役割分担には、これからも変わらない普遍性がありそうですね。
ワインの美味しさの予測、政策の効果測定、根拠に基づく医療、映画の興行収入の最大化など、データ分析はすでに専門家の能力を凌駕する一方、よい「仮説」を立てるのは人間にしかできない、というメッセージをメディアで最近見る機会があり、この本を手に取りました。
そもそも何を実験し、何を確かめるのか。
どの変数を入れるべきか、もしくは入れないべきか。
こうしたことを設定するのは、今は人間しかできないといいます。
そして、私がメディアの仕事をしている関係で、強く印象に残った言葉があり、
「まちがった数字に頼れば、世界が苦しむ」
という一文で、科学的に一見正しく見える数字の裏側で、前提やデータがまちがっていると、取り返しのつかない損害につながる危険性があります。
そのため第三者による確認は、より重要になっているのですね。
ここから個人的な話になりますが、私がテレビディレクターをしていたときの師匠の1人に、是枝裕和さんという映画監督がいます。
(『万引き家族』『そして父になる』などの映画が有名ですね)
「1人に語りかけるようにつくったものは、100万人に伝わる。100万人に向けてつくったものは、誰1人として伝わらない」
と語られ、私が大事にしている価値観の1つとなっています。
現在、ウェブメディアの仕事に軸を移し、データアナリティクスを活用していますが、いかに「たった1人」と向き合い、そこからよい仮説を立てられるかを試行錯誤しています。
これから私がデータサイエンティストになるというより、メディアを活かしてよい仮説を立て、データを扱う各専門家の力を最大限引き出す役割を目指しています。
たった1人の心に残る動画メディアと、数学的思考の両立は、いま私が追い求めるテーマの1つですね。