たまき

ミステリ・ホラー・青春・ファンタジー、どんな小説も読みたい雑食。漫画も読む。感想を書く。

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最近の記事

ドン・キホーテ(後編) セルバンテス

 後編と前編の最大の違いは、後編は、ドン・キホーテ前編が出版された世界を、ドン・キホーテ本人が遍歴の旅に出るというところだと思う。  だから、行く先々で「あなたがあの!」と、ドン・キホーテを知っている人たちに出会う。「そうなんですよ。彼が、その!」ってこっちは内心でニヤニヤしたりした。  そんな出会いの中で、どちらかといえばドン・キホーテは驚かれ、呆れられ、馬鹿にされ、嘲られるわけだけど、それが本当にもどかしい。  特に後編大活躍の公爵夫妻は、ドン・キホーテのファンと言えな

    • ドン・キホーテ(前編) セルバンテス

      白紙化された地球を救い、人理を守るとあるゲームに出てきた愛すべき登場人物のルーツを知りたくて、購入。 こういう古典的文学を読んで、当時の時代背景や作者自身の経験・心情・信条に基づいた感想を書ければかっこいいんだけど、ハードルが高いので最初から諦めている。 前編読んでまず思ったことは、ドン・キホーテはかなり頭が良いということ。確かな記憶力を武器に、数々の騎士道物語について広く深い知識を持って、それを理路整然と話す能力もある。捲し立てると言っても差し支えない。オタクだ。 彼が読

      • レプリカたちの夜 一條次郎

        レプリカたちの夜を読み終わったのだが、これはなんというか、冒頭にミステリー要素がお出しされて「お!これからどうなっていくのか」と心を掴まれたと思ったら、実際に作者に捕まれたのは襟首だった。 掴まれた勢いそのまま作者に放り投げられた世界は、複雑で文化的で哲学的でファンタジックでダークで突拍子もなくカオスで日常的でもあるけれど、やっぱり私の知ってる日常からはかけ離れた世界で、めちゃくちゃに荒波に揉まれて、そして気づいたら柔らかい地面の上に不時着してる、って感じだった。 ちなみに

        • 暗号解読 サイモン・シン

          『フェルマーの最終定理』を読んだことがあり、ややちんぷんかんぷんながらも面白い!という印象を鮮烈に残してくれたサイモン・シンさん。 この『暗号解読』も、やっぱり面白い!と夢中になって読みました。 暗号解読の歴史でありながら、それはとりもなおさず言語学の歴史であり、考古学の歴史であり、数学の歴史であり、統計学の歴史であり、そして物理学の歴史でもあった。 数々の暗号が生まれ、解読され、さらに強力な暗号が生まれるのは歴史の必然だけれども、暗号作成者と解読者の戦いは手に汗握るもの

          四畳半タイムマシンブルース 森見登美彦

          暇潰しの目的でふらりと入った本屋さんで、「あっ」と思わず本を手に取る経験は何度味わっても気持ちがいいと思う。 「ああ、今日本屋さんに入ってよかった。見つけて、お迎えできてよかった」とほくほくする。 まさに、「四畳半タイムマシンブルース」を買って本屋さんを出たとき、こういう気持ちだった。本当によかった。ちょっと早く家を出てしまった私、暇つぶしに本屋さんを選んだ私、グッジョブ。 そんなわけで、森見登美彦さんの四畳半シリーズ(と、勝手に呼ばせていただいております)最新作。文庫にな

          四畳半タイムマシンブルース 森見登美彦

          こそあどの森の物語 岡田淳

          全部で12巻+1巻のシリーズ。 1巻読むごとに更新していきます。 そう、児童書。 とっくに成人したのに児童書をまた紐解くのか?と思う自分もいたけれど、小学生の時に夢中になって読んだ本は、いつ読んでも魅力に満ち溢れている。 最近完結したと耳にして、居ても立っても居られず全巻大人買いしたので、子どもの頃に読んだ1〜6巻と、今回初めて読む7巻以降の感想をつらつらと書いていく。 ふしぎな木の実の料理法 あー、これこれ! これだよ、こそあどの森の物語! ってまずどこで感じたかと

          こそあどの森の物語 岡田淳

          熱帯 森見登美彦

          帯に偽りなし。 読み終わった時に、「ああ、やっぱりちょっと置いていかれたな」と思った。悔しいけど、後味は爽快。さすが高校生直木賞受賞作品。私も、高校生の時にこの本に出会いたかった。きっと夢中になって一日で読んじゃったと思う。 第一章を読みながら「ふむふむ、そういう話ね。『三月は深き紅の淵を(恩田陸著)』みたいなのを森見ワールドで展開してくれるのかな」なんて考えてページを捲っていた。 幻の一冊というのは、それだけでわくわくする。 実際、森見氏の前には『熱帯』が姿を見せるし、こ

          熱帯 森見登美彦