医療をもう一度信じてみようと思う

わけあって図書館で医療の本を探してたら『医療の外れで:看護師のわたしが考えたマイノリティと差別のこと』という本を見つけました。
「マイノリティと差別」とか書いてあったら読まなきゃいかんやろと手に取ってめくってみたら、うわ、めっちゃ面白いと読了。
こういうことがあるから図書館行きはやめられません。

なにが面白いかっていうと、まず医療の本を書いているのってたいていは医者なんです。
で、医者ってやっぱりちょっと浮世離れしているというか、読んでいて権威主義的なところが鼻につくことが多いんですよね。
それに対してこの本の著者は看護師なので、ちょっと患者に寄り添っていただけているというか、むしろ自分が患者になったときの当事者としての立場から書いてくださっている面が多く、めちゃくちゃ共感できる。

といっても、もちろん看護師は看護のプロなので、医療機関側からの目線もばっちり入っていて、それを患者側でも受け取りやすいように説明してくれているのでありがたい。
なにしろ最初のページから医療不信の話で「病院に行きたくない」と言う友人の話から始まっている。
え、待って、めっちゃわかるんだけど。
病院行きたくない。
ていうか、病院に行くような状態におちいりたくない。

何度も病院に行ってきたけど、過剰な期待は禁物というか、病院に行けばすべてが解決するなんてことはない。
期待しているから、不満が残ることもある。
医療不信は他人事じゃない。

閑話休題。
この本、構成もいいんです。
目次をちらっと見ると、ほらマイノリティのオンパレード。

1章 セクシュアルマイノリティの患者さん
2章 性風俗産業で働く患者さん
3章 殴力を振るう患者さん
4章 自分の子どもを愛せない患者さん
5章 医療不信の患者さん
6章 生活保護の患者さん
7章 依存症の患者さん
8章 性暴力被害者の患者さん
9章 医療現場で働く患者さん

ちゃんとセクマイも入っているよ。
被害者だけじゃなくて加害者も入っているよ。
バランスいいでしょう。
そして病院は相手がどんな属性でも救ってくれるんだよ。
と言いたいところだけど、やっぱり裏では「あの患者さん嫌い」みたいな愚痴もあるんだー。そして、そういうことも包み隠さずに書いてくれるんだ。なんて信頼できる書き手なんだろう。
それもそのはずで、たとえば性暴力被害者の患者さんというのは本人のことだし、それ以外でもかなり当事者に近い立場であることが強調されている。
なんで、そんな書きたくないことまでちゃんと書いてくれるんだろう。
すご。ていうか、すこ。
看護のプロとして身を引いて書くこともできるのに、親に対する感情まで含めてさんざん身を切ってくれている。

医者も看護師も人間で、できることしかできないのだけど。
できる範囲で真摯に患者と向き合ってくれるというのであれば、もう一度医療を信じてみようと思う。

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ええと
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