過熱する美容家電 異業種参入だけじゃない! ゲームチェンジャーになり得る〝老舗〟も
働く女性が増え、メンズコスメも拡がりを見せるなど、高まる「美」への意識。こうしたニーズを受けて、美容業界からも新サービスや商品が次々に登場。コロナ禍で一時は下火だった美容関連市場だったが、再び上昇基調を見せている。なかでも急激に伸びているのが〝美容家電〟で、エステサロン級の〝スゴすぎる〟商品も登場している。最新事情を追った。
「美」への欲求
JR大阪駅直結の商業施設ルクアイーレに9月1日、日本最大級のコスメ・美容情報サイト「@cosme(アットコスメ)」の関西旗艦となるリアル店舗がオープンした。
店内には500円以下の〝プチプラ〟から10万円を超える〝デパコス〟まで、約500ブランドの化粧品がずらり。しかも、ほぼすべての商品を店舗で試せることから、連日多くの女性たちでにぎわっている。「美」への欲求はとどまることを知らないようだ。
コロナ禍のリモートワークやマスク生活で、一時期は大きく縮小した化粧品市場。まだ、コロナ前の水準には戻っていないが、少しずつ回復してきている。
一方、同じ美容市場でも、コロナ禍で拡大し続けたのが「おうち時間」を充実する美容家電だ。
拡大する美容家電市場
美容家電とは、美顔スチーマーやリフトアップ美顔器、ヘッドマッサージャー、ボディケア家電など自宅で美容目的のセルフケアが行える家電のことだ。数年前から機器の軽量化や小型化、低価格化が進み、大手家電メーカーが続々と参入してきている。家電量販店には専用売り場まで設けられ、商品を手に取り、機能を確かめる女性や男性の姿が見られるなど、活況を呈している。
大手家電量販店のスタッフは「美顔器やスチーマーなど2~3万円程度の手軽な商品が人気ですね。売り上げもどんどん上がっています」と説明する。 ナリス化粧品のアンケート調査では、女性の家庭用美顔器の所有率は、すでに3割を超えた。内訳を見ると、50代の女性は2割ほどの所有率だが、20代は約4割に上っており、若年層ほど所有率が高い。「化粧品の美容効果を上げたい」という理由が一番多いようだ。
市場規模も年々拡大しており、野村総合研究所の予測では、2020年度に2575億円だった市場が、27年度には3709億円と約1.5倍に膨れ上がる見込みだ。
異業種に加え、業務用で有名な〝老舗〟も
化粧・美容の新たな領域として拡大を続ける美容家電。パナソニックなどの電機会社や資生堂、花王、コーセーなどの大手化粧品メーカー、カシオ計算機がネイルプリンターを開発するなど新規参入も相次いでいる。
さらに、これまでミス・パリやたかの友梨ビューティクリニックなどの大手エステサロンや、美容クリニック向けの業務用機器を中心に開発してきた老舗メーカーも、消費者向けの美容家電に本腰を入れはじめた。大阪市中央区に本社を置く美容・エステ機器メーカー「ユニッシュ」(中西博文社長)がそれだ。ゲームチェンジャーになり得るこの〝老舗〟の本格参入に、業界の注目が集まっている。
数々の特許とエビデンス(科学的根拠)をベースに、高品質機器を開発してきた同社が、消費者向けにリリースする製品は、プロが使う業務用機器と同じレベルを家庭用で実現したのが最大の特徴だ。
自社製品について中西社長は「従来型のホームケア機器の性能や効果に疑問を持つ美容関係者や〝美容マニア〟からの評価は非常に高い。しかし、一般の消費者には、まだまだ価値が伝わっていないようだ。今後はいかにわかりやすく表現していくかが課題」と話している。
機能偽装にご用心
元来、拡大する市場には、異業種もビジネスチャンスと見て続々と参入してくるのが世の常だ。そうなると、多くの製品であふれ、当然まがい物も混じってくる。
美容機器業界に詳しいジャーナリストは「日本製をうたっていながら、開発や製造を中国に丸投げしている業者が多い。機能について科学的根拠を問い合わせても『メーカーがそう言っていた』と言うだけで、エビデンスや文献に基づいた説明ができないメーカーは多数ある」と明かす。
さらに、このジャーナリストは「ラジオ波やEMSなどの周波数帯を利用し、複数機能の同時出力をうたうフェイシャルエステ機器が主流になっているが、そもそも電圧、電流、波形の定義が異なる機能を、同じ電極から同時出力するなんて、電気化学的にありえない。また、表記している機能がそもそも設計されていない偽装も状態化している。ただ、すべての販売業者に悪意があるわけではなく、無知が原因で取り扱っているのが実態なのでは」と分析する。
男女問わず「美」への欲求が高まる現代。効果が上がらないのに気づかず使い続けていたり、「失敗した」と後悔したりしないように、今後は消費者にも一定の美容知見が必要になってきそうだ。
1台で「顔」「髪」「身体」を、エステレベルでケアする機器開発/ユニッシュの中西博文社長に聞く
業務用美容・エステティック機器の開発・製造の老舗「ユニッシュ」が、家庭用に新開発した「イーポレーション・シュプリーム」。1台で顔、髪、体の悩みに対応し、業務用の出力を備えたプロ仕様の製品に仕上がっているのが特徴だ。現在、クラウドファンディングの「マクアケ」に出品し、目標金額の1300%の資金を集めるなど、注目度は高い。同社の中西社長に製品の特徴について聞いた。
─1台で美顔、育毛、痩身のすべてに対応できるのが画期的です。
従来の美容家電は、消費者からすれば、どれを買えばよいのか分かりにくい面があったのと、お手入れしたい部位ごとに機器をそろえなければならないので、経済的でないと感じていました。このため、どうしても1台にまとめたかったんです。3種類のアタッチメントを交換することで、フェイシャルケア、ボディケア、スカルプケアにも対応でき、家族みんなで使えます。
─御社は美容皮膚科などでの美肌治療、エレクトロポレーション(EP)の技術に定評があります。
まずEPについてわかりやすく説明しておきましょう。
そもそも肌にはバリア機能があるので、ハリや潤いを与えるヒアルロン酸やコラーゲンなどの高分子成分をいくら肌に塗っても吸収されません。それならば、分子構造を切断して小さくすれば吸収されるだろうと考え、「ナノ化」した商品もありますが、実は分子構造を切断してしまうと、ヒアルロン酸やコラーゲンが持つ機能が失われてしまいます。
そこで登場したのがEP導入技術です。特殊な電気刺激で皮膚表面に一時的に透過経路をつくることで、高分子のままの有効成分を肌の奥深くに直接届けられます。驚くほどの違いを実感できますよ。
この技術は「薬物投与装置」として弊社が特許を取得しており、皮膚科などでも使われています。
─EPで肌の深いところまで届ける医療レベルの高分子化粧品も扱っていますね。
はい。肌のハリや弾力、シミや肝斑の除去、脂肪分解による顔やせや部分やせ、育毛などEP用のエッセンスを5種類開発しました。
目的に合わせたエッセンスを使うことで、得られる美容効果が大きく変わってきます。これがエステサロンや美容クリニックで提供されている本物のエレクトロポレーションシステムです。
─EP以外にどんな機能を備えているのですか。
主な機能では、皮膚の深いところを温めて代謝を上げる「ラジオ波(RF)」があります。
─RFはさまざまなメーカーの美容家電にも搭載されていますが、他社製品との違いは。
周波数に大きな差があります。家庭用の一般的なRFは300キロ㌹ほどですが、この「イーポレーション・シュプリーム」は業務用と同等の1メガ㌹(1000キロ㌹)。つまり、他社の3倍の高周波域を出力できます。
周波数高くなるほど体の深い部分の温度を上げ、代謝を活発にできるので、フェイシャル、ボディ、スカルプすべてのトリートメントに有効な美容効果が得られます。
─片手サイズなのに業務用のパワーを備えているということですね。爆発的に売れる気がします。
そうなれば良いのですが、現実はそう甘くない(笑)。イーポレーション・シュプリームは6つの特許技術に基づき開発されました。さらに京都大学の特許ライセンス許諾を受けた技術を応用しています。そのほか、すべてのエッセンスの美容効果には必ずエビデンス(科学的根拠)を取得しています。
ところが、こうした科学的根拠を示しても、一般の方々には難しすぎて伝わらない(笑)。一方で、エステティシャンはこの製品一つで「お家サロン」を運営できますので、美容業界の方からは評価が高いのですが…。
─どの業界でもハイレベルの製品はなかなか理解されないもの。美容知見を高める活動が必要かも知れませんね。
はい。業界の底上げのためにも頑張ります。
【企業情報】株式会社ユニッシュ/大阪市中央区道修町2─2─11 ベルロード道修町8.9階 /電話06(4707)7100(代表)