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癌闘病を支えてくれた愛犬Teeとの別れ(前編)

いきなりですが前回の記事。

こちらでも少し触れさせていただいたのですが
愛犬Teeのことについてちょっとお話しておきたいなと思って
今日は朝からキーボードをカタカタやってるんですが
今朝は寝覚めが良くなくて、Peeちゃんをお見送りした後も
なんだか頭がふわふわしていて働かないような感じ。
ま、いつもぼーっとしてるんでいつも通りっちゃいつも通りか笑。

我が家には現在二匹のトイプードルがいます。
以前は赤毛ロングヘアードミニチュアダックスのTeeという子もいましたが
5年前に老衰でこの世を去りました。今頃は天国でお友達と走り回ってるか
近づいた人の顔をベロベロ舐め回してるか(Teeは生粋のペロリストだったので笑)とにかく元気にやってると思われますが
生前、闘病中の僕を精神的に支えてくれた相棒との出会いから
お話していきましょう。




Peeちゃんがお婆ちゃんの家から連れて帰って我が家に迎え入れた当時は
確か二歳くらいだったかと思います。



「お婆ちゃんが飼えなくなったら、うちで飼ってあげない?」



時々突拍子もないことをいうPeeちゃんからの、突拍子もない突然の電話。そりゃあもちろん僕は犬と共に育ってきたようなもんだから
犬は大好きだし、一緒に寝たりしたいし、スリスリし合いたいし
飼ってあげたいよ、と思う気持ちもありましたが…


この時は正直、少し動揺しました。


なぜなら…愛犬と過ごす時間の尊さを知っているのと同時に、お別れの辛さを知っているから。愛犬は大事な家族であり良き相棒。そんな長年連れ添ったBuddyの最期を看取ったことのある人なら、ぽっかりと胸に穴が空いたような耐え難いあの悲しみを体験されてると思いますし、あんな思い二度としたくないから「もう犬は飼わない」って思ってらっしゃる方も少なからずいるのではないでしょうか。実は僕もその一人、でした。
親が飼ってる犬が旅立つ時ももちろん悲しかったけど
自分が成人して責任を持って飼い始めた愛犬の死は悲しいというより
辛く、その事がとても大きなトラウマになっていました。
なのでTeeを迎えたいと言ってるPeeちゃんににそのことを話すと…


「一度会ってみたら?可愛いよ!」と。


まるで話を聞いてない。
記事をずっと読んでくださってる方なら薄々わかってきたと思いますが
一度決めるとPeeちゃんってなかなか強引なんです。
僕のトラウマなんて知ってか知らずか、そんなもん会ったら情が移って飼いたくなるに決まってるやん!と思いつつも…
心のどこかで密かに楽しみだった初対面の日。
恐らくPeeちゃんは、そうは言っても犬めっちゃ好きやん!っていう
僕の心情を見抜いていたのでしょう。

実際にTeeに会ってみるとマイペースだけど大人しくて、とても人懐こい性格。本当にいい子でした。頭を撫でてあげながら、しかしどこか受け入れることができない僕。そんな僕をよそに当時小学生だった子供たちがまたしても僕の心の壁を破壊していく。


「ねー!うちで飼ってあげようよー!いいでしょ!?いいでしょ!?」


半ば押し切られる形で迎え入れることに。
Teeとの出会いはそんな感じだったのを覚えています。
普段、おばあちゃんの畑で遊んでいたTeeは我が家に初めてきた時も泥んこで、まずは子供たちとお風呂に入れてあげました。


「嫌がるかな?」と思いきや
大人しく気持ち良さそうに湯船に浸かってます。
Teeはとてもお風呂が大好きでした。
頭からシャワーをかけると目を瞑ってじーっとしてます。
まるでマッサージでもやってもらってるかのような恍惚の表情。
子供たちがタオルで拭こうとするとブルブルブル〜!
っとそこいら中に水飛沫を飛ばすTee。
すると子供達は「うきゃー!!」っと大はしゃぎ。
みんなで騒ぎしながら慣れない手つきでドライヤーをかけてあげると、
Teeも嬉しいのかペロペロとみんなの頬を舐めてくる。
その時のキャッキャと楽しそうな子供たちの顔をみて、この時に僕はTeeを受け入れる覚悟を決めました。





Teeの存在は子供達の成長も助けてくれました。進路・恋愛・友達関係…思い悩む思春期の子供達に寄り添ってくれたことで乗り越えられたこともあったんじゃないかな。よく寝る時に「今日は私が一緒に寝る!」「僕が一緒に寝る!」とTeeを取り合いしてたのが懐かしいです。まぁ結局僕のところで寝るんですけどね笑


それから程なくして…
僕は癌になり、苦しい闘病生活が始まったわけですが
Teeはいつも傍に寄り添ってくれていました。普段ボケーっとしているようで結構ホスピタリティの高い子だったので、抗がん剤で僕が苦しんでる僕を見るとすぐに察知して離れないんですよね。
犬って匂いで飼い主の体調がわかると言われてますけど
今飼ってるトイプードルたちも本当に敏感なんですよね。
いつもお腹の上に乗って(めっちゃ苦しかったけど)じーっと僕の方を見つめて「トーチャン大丈夫か?」と心配してくれていました。
一緒にキャンプに行ったりどこに行くにも一緒だったTee。
二匹のトイプードルを迎え入れた時も子犬達の遊び相手になってくれたり、喧嘩の仲裁をしてくれたりとお兄ちゃんぶりも発揮してくれてました。




それから月日は過ぎ…
家族とTeeのおかげで一度目の癌を克服して
第二の人生を謳歌していました。

気がつけばTeeも17歳。
変わらず食欲もあり毛艶も良く、若い頃と変わらないTeeを見る度に
この子は絶対長生きしてくれるだろなと確信していたんです。


しかし、夏を目前に控えたある日。
Teeが突然ぐったりして動かなくなる。
前日まであれだけご飯をおねだりしてたのになんで?
水も自力で飲めないほど弱っていました。
何か悪い病気にかかったのでは…
心配になりかかりつけの動物病院に連れていくと
獣医さんの診断は



「老衰です。」


と、突然の宣告。
自分が余命宣告をされたあの日の衝撃が走りました。
あの時同様、受け入れることができないままTeeの介護が始まりました。
脱水症状を防ぐために毎朝晩、抗生剤と下痢止めを混ぜた食塩水を背中に注射して、シリンジで流動食や水を与え、床ずれを防ぐために夜中に何度も起きて寝返りをうたせたり、オムツを替えたり。
痴呆も進みそこいら中を徘徊しながら、鏡の前でピタッと止まって
またウロウロ。この様子はめっちゃ面白かったですけど笑。


毎日一進一退。
いつ旅立ってもおかしくない状態で明日には逝ってしまうんじゃないか、毎日ハラハラしてたのを今でも覚えています。
朝、目が覚めては「Teeは!?生きてる!?」と焦って飛び起きて
目を開けてるTeeを見て良かった、今日も生きててくれた…
と安堵する毎日。
ある朝、呼んでも起きずに一瞬ハッとしましたが・・・
「とーちゃん、水飲みたい。」って感じでムクッと起きてきて
Peeちゃんと二人で涙ぐみながら笑ってしまったり。



毎日の介護は正直大変だけど
でもTeeの事をこれまでで一番愛おしく感じる日々でもありました。
そんなドタバタな日が続いていたある日…
Peeちゃんとお茶しながら「死」について話しました。




Teeが教えてくれた「自分らしく生きる」ということ。



ドライブが大好きだったTee。窓から顔を出して空でも飛んでる気分だったのかな?


奇跡の復活を信じて脱水を防ぐために行っていた毎朝晩の注射。
先にも言いましたがこの液体には抵抗力を失った体のために
ほんの少しの抗生剤と下痢止めが入っています。
でも果たしてこれがいい事なのかどうか
というのがPeeちゃんの意見でした。


これは所謂「薬物治療」であり「延命治療」。
そう、僕自身が癌になって、最も嫌だったことです。


これまで何度か親が飼っていた犬の死を見取ってきたけど
寿命を全うした子達の最期は決まって餌も摂らず、水も飲まず
まるで枯れるようにでも苦しまず、静かに眠るように
息を引き取ってきました。
「今日は久しぶりに自力でご飯をたべた」と喜んでいたけど…
一見すると必死に生きようとしている様にもとれるTeeの姿だけど…
少しづつ餌を摂ってくれていれば、いつかはと願っていたけど…



「でもこれって間違ってるような気がする」とPeeちゃんは言う。



そう。僕も薄々わかっていたんです。
これは単に飼い主の深すぎる愛情が故の幻想で
自然界においてこの行為は人間側の手前勝手な押し付けだということを。
本当なら穏やかな死を迎えられていたのかもしれないのに
無理をさせる事で、逆にお腹に水を溜めて
苦しい思いをさせるんじゃないのか?
俺も腹水を溜めていた時苦しかったじゃないか。
ご飯が食べられたとしても消化器官が衰えてウンチが出ない
そんな苦しみをTeeにさせるのか?
致命的なガンを患い、藁にもすがる思いで薬物治療に依存し
しかしそれでも根治しないことを知り絶望に暮れた中で・・・
僕は化学療法を断ちました。


たとえ死んだとしても「自分らしさ」を取り戻すための治療。


Peeちゃんの言葉で
勇気を持って選んだあの日のことを思い出しました。
僕は大切な事をすっかり忘れていた。
17年と半年の間、立派に生き、寿命を全うしようとしている
Teeに対して僕は、僕自身が嫌だった事をTeeにしてしまっている。
ただ別れが寂しい、生きていてほしいという
飼い主の弱さをTeeに押し付けるように生かしている。


Teeを初めて我が家に迎え入れた日
この子が死ぬまでちゃんと世話をしてあげるんだと誓いました。
この日が来ることはわかっていたはず。
でも日に日に弱っていくTeeの姿に耐えられず
俺だって克服したんだ、Teeだって大丈夫なはず…と
この無意味な治療を選択してしまった。


看取るということについて僕は深く考えていなかった。


いつまでも側にいて欲しいと願うのは自然な感情だけど
それに流されてはいけない。ただそれは別れの日を先伸ばしにしたいと言う
飼い主の、人間の勝手なわがまま。


ごめんなTee。もう薬はやめようね。


明日死んでしまうかもしれないけど
ちゃんとTeeを看取ることが出来なかったらきっと
後悔だけが残ってしまう気がする。
残された僅かな時間だけど、家族全員で語りかけてあげよう。
体をいっぱい触ってあげよう。
飼い主にできることなんて本来それくらいしかないのかも。
Teeの為に、再び勇気を持たなければ。




続く。




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