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時間をかけてじっくりと大きいものをつくり出すのを、せっかちは待てない


ひとりで大きな巣を作る、クモちん


職場に、思ったことを全部しゃべるヒトがいる。本人にしたら全部じゃないのかもしれないが、聞いていると言いたいことを全部言ってるように思える。どうでもいいこと、答えがないこと、知らないヒトのこと、自分が知っていること、一度しゃべりだすと止まらなくなってしまうのだろうか。わからなくもない、慣性の法則もありますしね。でも自分の感情まで全部説明しなくてもいいんじゃないのか、何度も繰り返して。話すことで思考を探っているんだろうか。周辺を巻き込んで?

ひとりごとを長いこと言っていると思えばいいのかというとそうでもなく、質問してくる。声をかけられたひとは「え、なに?」などと反応する。その時点で(おっとこれはいけない)と感じろよ。しかしまたイチから説明しだす。作戦失敗です。

静かに仕事や勉強をしたいひとと、ざわついたなかでしたいひとがいるに違いない。学生のころ、私は没頭するタイプだったのか、うるさいところでも集中できた。でも自分から好んで音楽を聴きはしなかったし、友達と勉強する、という発想自体がなかった。漫画やアニメで「友達と勉強するから~!」と楽しげに外出していく主人公を観て、友達とどうやって勉強するんだろう? 集団で黙ってドリル解くのかな、他人の存在意義は? と不思議だった。でも誘われて、いっちょやってみるか、と思って放課後の教室で何人かで勉強をしてみた。宿題だったかな。そうするとですね、わからないところを聞かれるわけですよ! それを説明するわけですよ! なるほど、そういうことかと。それって、聞かれたほうは自分の勉強ができないよね。それって、聞いたほうも自分で解かないから気づきがないよね。それって時間の無駄だよね。と思って「友達と勉強する」をやめてしまった。でもいまなら、議論したら面白かったろうなと思う。更に理解が深まったかもしれない。正解までの最短距離を求めるせっかちだから、友達と議論する機会を自分から手放してしまった。惜しかったな。友達と勉強するのは、効率的ではないかもしれないが、議論して大きくその問題を捉えることだったんだ。

ひとりで作業すると、自分だけのアイディアとイメージでスピードアップして進めることができるので、めっちゃ深く掘れる。ぐんぐん行く。でも、狭い。黒部の峡谷を狭く狭く掘って光が見えて貫通して、じゃあこれをさかのぼって10キロメートル分広げよう、というのと、初めから大きく掘っていくのと、どっちがいいか。大きく掘るほうが破砕帯の問題もしっかり解決できて、かえって効率的なんじゃないか。黒部の例だとわかりづらくなるか。大きく育てるなら、初めから組織を作ってしっかり大きく始めたほうがいいんじゃないかということなんだが。

会社では、小さく生んで大きく育てる、なんてことをよく言う。小さくとは、予算がない、ヒトがいないことを指しているので、言い方は悪いが「誰か人柱になってくれ」ということなんだと思う。個人が必死に切り開いてある程度大きくしたら、それを取り上げて整備して固める。せっかちタイプは使い捨てで割を食う。

思ったことを全部しゃべっているかのようなヒトたちは、議論して考えを共有して、掘り下げたいからそうしているに違いない。時間がないヒトにしてみたらそれはとてつもなくムダに感じるのだが、遠い将来には黒部トンネルが開通するのかもしれないと思うと、ちゃんと対応しないといけないのではないだろうか。身がもてばの話だが。


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