
生きていくための承認欲求と達成感が、イチョウ並木に詰まっていた

季節が遅れているせいで、11月下旬というのに南関東はやっと紅葉のシーズンを迎えた。SNSの情報に惹かれて巨大な公園のイチョウ並木を見に行ったところ、イチョウの葉っぱよりヒトのほうが多い、と家族がつぶやくくらいの人波だった。初めて行ったけどすごいね立川の国営昭和記念公園。かたらいのイチョウ並木。
さすがに素晴らしい。まっ黄色のイチョウの葉をこぼさないようにそーっともちこたえている大木が、最後尾まで見えないくらい続いている。一本一本がまるで釈迦如来の光背のようだ。はらはらと落ちた葉っぱのじゅうたんの上「まっ黄色の世界」を歩く。ツクリモノじゃないナチュラルなまっ黄色の世界だぜ。しかも青空。コントラスト抜群の超絶の世界。ヒトも集まるわな。
そこは各国のいろいろな関係性のヒトが集まり、みんな笑顔で、やさしさにあふれているようだった。自撮りに写りこむのを避けてあげたり、泣き叫ぶ小さい子どもを微笑んで受け止めたり。そしてかなりの数のカップルが手をつなぎ、腕を組み、写真を撮り合っていた。
ビジネスでもプライベートでも、たいがいのことは承認欲求を満たすか、達成感があれば、うまくいくのではないかと思っている。逆に両方ないと、不満であり不安であり、失敗したと感じてしまう。達成感は「やりきった」と感じられればクリアする。しかし承認欲求の方は、誰かに認めてもらわなければならない。ヒトが社会で生きる動物であるということ、ひとりでは生きられないと言われることと、関わってくるんだろう。
承認欲求のもっとも確実なものは、私は恋愛や結婚だと思っている。どんなにつらいことがあってもひどい目にあっても、あのヒトにとっては私は特別な存在なのだ。自分の存在価値を認めてくれる、自分を愛してくれるヒトがいることを思い出して、なんとか生き延びられる。
恋人がいなくても強く生きていけるヒトは、すごいと思っていた時期もある。家族やほかの関係性から承認欲求を得られるヒトも多いに違いないのだけど、そこに頼れないヒトもまた、確実にいるのだ。
仲の良いカップルや家族を見て、承認欲求されて生き延びられるね、とこちらも安心する。おおげさかもしれないけど、自信をもつことは生きていくうえでの大切な燃料だ。地元に帰ってきたら、若いカップルの買い物帰りの姿を見かけた。それぞれ箱ティッシュとトイレットペーパーを片手に持ち、もう片方の手を握り合っている。生活感あふれる仲良しっぷり。
ああ、どうかお互いを認め合って、争わずに生きていきたい。美しい景色を観られれば、達成感もかなりチャージできる。いまの感謝が明日につながりますように。
明日も生きていける気がした、イチョウ並木の情景だった。