#361 田崎基『ルポ特殊詐欺』読書アウトプット(第二章~第四章)

第二章 粗暴化する特殊詐欺

この章では、被害者に危害を加えてでも現金やカードを奪う2人の強盗犯について書かれています。
入口は騙して取るという詐欺だった手口が、やがて凶悪化、粗暴化していく構図。それが特殊詐欺の害悪を象徴する2つ目の側面だ。手っ取り早く稼ぐ、そのために受け子や出し子を始めたはずが、上からの指示は過敏になり、強盗事件までを引き起こす事例は少なくない。被害者にけがをさせ強盗致傷事件にまで発展、財産的被害だけでなく、心身ともに重大な苦痛を負わせる犯行の実相は、凄まじい。

P048

ギャンブルや借金で困った結果、ツイッターなどで「闇バイト」や「高額報酬」を検索して、集まった面識のない者でチームを組む。そのチームが、現金があると見込まれる民家に、偽の警察手帳、捜査差押え令状を用意して侵入、家人が抵抗したら手錠をかけて現金やカードを奪うという、これまで知っている特殊詐欺を越えた強盗にまで発展しています。
さらに、出し子やかけ子のように、「やめたい」と言っても、抜けられない。指示役に対して、嫌そうなそぶりを見せると、実家の住所を押さえられていて「母親がどうなってもいいのか!」と度々脅されて抜けられない。
他にも、家族に黙ってギャンブルで借金をした犯人は、手っ取り早く収入を得たいことを指示役に伝え、「タタキ(強盗)をやれ」と言われ、断ると「家族を殺すぞ」とメッセージと合わせて家族の写真が送られてくる。
犯行後も、24時間、昼も夜もなく指示役から連絡が入り、逃げようとすると「家族を殺すぞ」とまた脅され、犯行を繰り返すといったように、凶悪な犯罪に一度手を染めると簡単に抜けられない構図も知ることができました。

第三章 より巧妙に、より複雑に

この章では、特殊詐欺犯罪の構図が、より巧妙に複雑化した「飛び」について書かれています。

特殊詐欺は、大きく3つの実働部隊によって成し遂げられている。
1つは、騙しの電話をかける「かけ子」グループ。もう1つが、かけ子によって騙された人のところへ行き、現金やカードを受け取る「受け子」、さらにそのカードを使って現金を引き出す「出し子」だ。受け子と出し子を合わせて「UD」と呼称することもある。
犯行全体を統括、指導するのは、この3つの末端たちを取りまとめるさらに上層幹部ということになる。
この構図の中で「飛び」は完全に異物だ。
「かけ子」グループが騙しの電話をかけて被害者が騙された段階で、飛びたちは、自分たちがコントロールできるUDをツイッターから応募させて、別の詐欺グループに潜り込ませる。自分たちのUDが、被害者から現金やカードを受け取った段階で、かけ子グループに渡さずに持ち逃げする。これが「飛び」だ。
かけ子への報酬支払いや、他人名義の飛ばし携帯、被害者となる高齢者の名簿といった特殊詐欺にかかるコストを負担せずに、被害金をまるごとかすめ取っていく実に狡猾な犯罪手法である。

P092-093

飛びグループ同士でも「飛び」が潜り込み、使っていた受け子に被害金を持ち逃げされる。「飛ばれたら金をツメろ(返金しろ)」とリーダーから追い込みをかけられ、また次の犯罪へと繋がるという、ここでも負のスパイラルが起きています。

第四章 暴力団と特殊詐欺

この章では、特殊詐欺と暴力団の関係が書かれています。

徹底的な法改正と社会全体に浸透した"暴排"によって、種々様々な資金源が微に入り細に入りことごとく断たれていった。
(中略)
全方位的に暴排が徹底され、資金源を次々と断たれていった暴力団が資金源として目を付けたのが20年ほど前から隆盛した「トクサギ」(特殊詐欺の略称)だった。
警察庁の資料では、犯行グループの中枢のいわゆる主犯格被疑者(グループリーダー、首謀者など)を「中枢被疑者」と位置づけている。つまり、それ以上の上層がいないトップのことである。この中枢被疑者の検挙人員は2021年は43人で、全体の検挙人員と比べるとわずか1.8%にとどまっている。つまり、検挙された人の98.2%は末端だったということだ。この中枢被疑者のうち暴力団構成員等の割合は、39.5%(17人)に上り、リクルーターは39%(62人)だった。暴力団構成員等が、トクサギに深く関与し、犯罪全体を統括、牽引する役割を担っている構図が見えてくる。

P146-148

この章の最後で、暴力団と特殊詐欺が社会に与える「害悪」という言葉で締めくくられています。

特殊詐欺は、暴力団等と密接な関係によって成り立ち、その害悪がまた別の犯罪を誘発するスパイラルとなる構図が浮かび上がる。被害者には財産的損害だけでなく精神的苦痛も与え、さらにその被害金は反社会的組織の資金として流れ、反社会的な用途へ費やされていく。特殊詐欺に関わった人間たちがさらなる凶悪犯罪へと突き進んだり、拉致・監禁や傷害の被害者となるケースもある。「詐欺」という財産犯の余波が、社会に与えている害悪は計り知れないものになっている。

P131


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