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認知症、あるいは思い出の天国アップロード

おばあちゃんが天寿をまっとうしそうです。

来月で92なので、それまでは頑張ってほしいです。

9月に入院し、先日療養型病院に転院。
中心静脈栄養でカロリーとっていくようですが、おそらくそこで近いうちに、といったところ。

ただ、現状では特段大きな病気もないので痛みや苦しみのない、緩やかな坂をゆっくり降りている状態。

母親と「おじいちゃんの時は呼吸が苦しくて見ていてとても辛い最期だったので、おばあちゃんは苦しくないのが救いだね」と話しています。


おばあちゃんは以前から認知症が進んでいます。
僕のことももう見ても「どなた?」と言いますが、「孫のひろだよ」というと目を見開いて「おっきくなったねぇ」と。
それも5分後には忘れていますが、小さかった頃の僕を覚えていてくれて、胸が詰まりそうになります。

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おばあちゃんはとても幸せな人生だったと思います。

苦労した話はあまり聞いたことがなく、さりとて無かったわけでもないでしょうが、それでも。

裕福な家庭に生まれ、管理栄養士として仕事をし、おじいちゃんと結婚して2人の子供を育て上げ、近所の親戚の子供たちにもご飯を作り、孫が3人。
好きな書道や旅行も楽しみ、オシャレをして。

僕はおばあちゃんのアップルパイが大好きでした。

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認知症は大変ですよね。

物忘れだけでなく、気性が荒くなったり、理解不能な行動をしたり。

でも、おばあちゃんは物忘れだけで本当に穏やかな余生を過ごしています。

母親に言わせると、それでも怒りっぽくなったそうですが。

おばあちゃんが持っていた、たくさんの幸せな記憶はどこに行ったんでしょう。

92年物の記憶ですから、それはそれは膨大な容量になるよなぁ、そんなことを夜中に考えていたので、

「もしかしてシャットダウン前に天国にアップロードしてんのかな?」

などとよく分からないことを思いついてしまいました。

とりあえず今生きるだけの記憶を手元に残しつつ、徐々にあっちにアップロードしてるのかな。

先に行ったおじいちゃんとの共有フォルダとかあるのかな。

できれば嫌な思い出はゴミ箱に入れておいてほしいな。

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人事のスペシャリストであり現役美大生である青田努さんの著書「『いいキャリア』の育て方」に、僕の大好きな章があります。

「いい思い出は立派な資産になる」

こっち側からあっち側へ、持っていけるものがあるとすれば、思い出しかないよね。

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先日お見舞いに行ったとき、おばあちゃんの足が冷たかったので手でずっと温めました。

何度も「いい気持ち」とにっこりしてくれた、その笑顔と声を僕はずっと忘れないでしょう。

僕がいつかあっちにもっていく、大切な思い出として。

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