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踏まれたり蹴られたり
〔解説〕
巷間では、「さんざんな目に遭ったのは自分なのにさ、なんか変よね」などという声もある「踏んだり蹴ったり」ということわざ。知らない人はいないというくらい有名なことわざだが、たしかに違和感がある。
いまさら説明するまでもなく、このことわざは災難や不運が続いたり重なったりしてひどい目に遭うことを例えたものだ。自分が誰かをひどい目に遭わせたのではなく、遭わ〝された〟のだ。
つまり、このことわざは意味のうえでは受け身であるから、端的に「踏まれたり蹴られたり」としたほうがいい。
「昨日は彼女に振られたばかりか、財布をなくしてひどい目に遭った。これじゃ踏まれたり蹴られたりだ」
と言うほうが(ほんとうは)自然だ。
ところが、じつは「重ね重ねひどい目に遭わせる様子」という能動的な意味もあるのだ。したがって、一概に「踏んだり蹴ったり」が誤用とは言いきれない。(※これはパロディーではなくて事実)
〔さらに解説〕
正しいつかいかたの例。
「凡太郎のやつ、宿題もやらないで遊んでばかりだな。もう映画に連れてってやらないことにして、小遣いも半分にしよう」
「あなた、それじゃ凡太郎を踏んだり蹴ったりじゃないの」
となり、ほんとうにそうされた凡太郎の側から言えば、
「まいったなあ、これじゃ踏まれたり蹴られたりじゃん」
となる。
というわけで、「踏んだり蹴ったり」より「踏まれたり蹴られたり」が妥当である。
類語も多く、よく知られたものでは「泣きっ面に蜂」「弱り目に祟り目」「転べば糞の上」などがある。
また、これまで誰も知らなかったものでは「犬に噛まれ猫に引っ掻かれ」「妻には逃げられ愛人には振られ」「まずかったり高かったり」「笑われたり怒られたり」などがある。