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人間の声か人工音声か。姿が見えない声は悩ましい
人工知能の進歩が著しく、フェイクの映像やら音声やらをいとも簡単に作り出せるらしい。
人類は将来、コンピュータに支配されてしまうのだろうかなどと、妄想が得意な私はしばしば心配をするのだが、ふと、平成時代のあるできごとを思いだした。
私がまだ現役でバリバリ仕事をしていたその頃でも、人工音声の性能はよくなっていて、人間の声を録音したものなのか、まったくの人工のものなのか、判別がむずかしいものもあった。
あるときある会社へ電話をしたら女性が出た。と思ったのだが、応答が無機的というか事務的というか、あまりにも淡々としていたので、人工音声が応答したのかと思った。
で、私はわずかの間、とまどいながら次の言葉を発しなかった。すると相手が、「もしもし?」と問いかけてきた。なんと人間だったのだ。
人間のような人工音声と、人工音声のような人間の声。話のタネになってよかったが、なるべくはっきりしてもらいたい。
自宅の風呂も、「お風呂が沸きました」とか「給湯温度が変更されました」とか、女性の声でいろいろしゃべる。
風呂場だから少しばかりエコーがかかり、いっそういい声になる。なかなかやさしく、色っぽくもある。で、風呂へはいるたびに、飽きもせず感心している。
ところで、自宅の風呂の声は、人間の声を録音したものであろうか。それとも人工音声であろうか。
顔や姿の見えない音声は悩ましい。