貧乏揺すりの、ある驚きと疑問
ある日、私は成田空港のフードコートで昼食を摂っていた。
私のテーブルと通路を挟んで隣り合っているテーブルに、20代とおぼしき男性2人の若者が着いた。
私はちらちらと横目で彼らを見ていたのだが、全体的な様子からして、日本の隣国のひとつから観光旅行に来たのだと推測できた。
2人はテーブルに両肘をついて、スマホでゲームを始めた。そのうちにひとりが貧乏揺すりを始めた。
まもなく、もうひとりの若者も貧乏揺すりを始めたのだが、それを見た私は心の中で驚きの声をあげた。なんと、両足で貧乏揺すりをしていたのだ。
両足での貧乏揺すりが普通のことなのか、それとも珍しいことなのか、私にはわからないが、とにかく、貧乏揺すりは片足でするものと思っていた私は驚いた。
ここから先は別の視点の話。
両足での貧乏揺すりを見て私の能天気な頭が刺激されたのか、わずかな感慨が湧いた。貧乏揺すりをするのは日本人だけじゃないんだな、という妙な感慨が。
さらに、外国では貧乏揺すりのことをどういう言葉で表すのだろうか、という疑問も湧いた。
いま貧乏揺すりをしているこの若者たちの国も含め、日本以外の国々ではなんと呼ぶのだろうかという疑問だ。
名称にはその国の文化が反映されるから、国ごとに趣のある名称があるはずだ。日本の文化が貧乏揺すりという名称を生み出したように。
とりあえず英語だけ調べてみた。あえて機械翻訳は使わず、手許のアドバンスト フェイバリット和英辞典を引いた。単語は載っていなかったが例文が出ていた。
「頼むからその貧乏揺すりをやめてくれ」
〝Please stop jiggling your legs, will you?〟
ドイツやフランスでは、エジプトやコンゴでは、なんと呼ぶのだろうか。
両足での貧乏揺すりと、日本以外の国々での呼び方に、能天気な思考回路が揺すられる。