河童の屁
〔解説〕
「屁の河童」は、元は「河童の屁」だった(※これはパロディーでなく事実)が、どういうわけか河童と屁が入れ替わってしまい、いつの間にやら「屁の河童」が大手を振って歩くようになってしまった。
「河童の屁」と「屁の河童」では大違いだ。わかりやすいようにほかのもので対比してみよう。「犬の糞」と「糞の犬」、「花の種」と「種の花」というようになる。文法のむずかしい話はさておくとして、感覚的には明らかにおかしいことがわかる。
というわけで、元の「河童の屁」なら〝河童が放った屁〟であり、すんなり落ちつく。
定着している「屁の河童」の意味はよく知られているが、念のために説明しておくと、「物事が簡単でとるに足りないこと」「問題とするほどのこともなく、苦もなくできること」という意味だ。
「屁の河童」ではなく「河童の屁」であっても、なんの問題もないどころか、むしろこれが正当と言える。
〔さらに解説〕
ところで、なぜ河童なのだろう。ことわざに架空のものが登場することはよくあるが、わざわざ河童などを引っ張りださなくても、身近な犬や猫でも十分事が足りるではないか。
じつは、「河童の屁」にはさらなる元があったのだ。大元は「木っ端の火」だという説がある(※これもパロディーでなく事実)。確かに、「コッパノヒ」が訛って「カッパノヘ」に変わったとしても不自然ではない。
「木っ端の火などはたいしたことがない」ということであり、意味としては変わっていないから理屈も合う。
奈良子「ねえ凡太郎くん、今日の宿題、いつもより多くて大変じゃない?」
凡太郎「へっ、そんなの河童の屁だよ。ところで奈良子ちゃん、さっきおな
らしたの、先生にバレてたよ」
奈良子「そんなの屁とも思わないわ」
類語には「鼠の屁」「ノミの小便」「蚊の冷や汗」。
対語には「鯨のげっぷ」「ゴジラの宿便」など。