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続・酒にまつわるちょっとした話のタネ
「1月いっぱい正月だから」「孫が生まれたから」「あしたは仕事が休みだから」「理由なんかなんでもいいから」などなど、良民は飲む口実に事欠くことがない。
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親子酒という落語がある。親父と倅(せがれ)が酔っぱらって話をしている。親父が倅に、
「おめえの顔が七つにも八つにも見えてきたぞ。こんな化け物みてえな倅に身代を譲るわけにはいかねえや」
すると倅が、
「冗談じゃねえや父っつぁん。おれだってな、こんなぐるぐる回る家なんざ欲しくはねえや」
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徳利と銚子は混同されがちで、事実、それがすっかり定着しているが、本来は別物である。
徳利は口がすぼんでいて、細い縦長で首の部分が細くなった筒型をしている。もともとの発音は「とくり」のようだ。
銚子には長めの柄が付いていて、胴から注ぎ口が突き出している。急須のような形と言えばわかりやすいかもしれない。結婚式の三三九度などで使われるので、見たことがある人も多いだろう。
燗のしかたにも違いがある。徳利は酒を入れてそのまま燗ができるが、銚子はできない。銚子の場合は、燗をした酒を後から入れることになる。
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「酒池肉林」という四字成句は多くの方がご存じであろう。ただし、見たり(読んだり)聞いたりしたことはあっても、意味は知らないという御仁もおられよう。
ストレートに言えば、酒で池を作り、肉を林に掛けるというような意味で、豪奢を極めた、贅沢三昧のずぼらな遊び方のことを言う。
「肉」のことを女体と勘違いし、女をはべらせて酒を好き放題飲むことだろうなどと思った方もおいでかもしれないが、曲解せずにそのまま食用の肉が正しい解釈だ。
ただし、この成句は、現在の中国が成立する以前に栄えていた夏(か)や殷(いん)の王の所業に由来することを考えると、彼らは奢侈淫佚に明け暮れた暴君淫主だったそうだから、肉とは女体のことだろうなどと思われてもあながち間違いではないだろう。
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昔から「酒に十の徳あり」と言う。
1、百薬の長である
2、寿命をのばす
3、旅行の際には食事にもなる
4、寒いときには体を温める
5、他家を訪れるときの手みやげとなる
6、憂いを払う
7、庶民でも偉い人と気さくに話ができる
8、労を癒す
9、だれもが和合できる雰囲気をつくる
10、独居の友となる
これらをどうとらえるかは人それぞれだが、とにかくこれが先人の言う酒の徳。
当てはまるものもあり、逆のものもあり。活かす活かさぬは、解釈のしかたや飲む人次第だ。
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「後ろに柱、前に酒」ということわざがある。柱に背を持たせて座り、ゆったりとした気分で酒を飲む様子を言う。
大勢での宴会もいいが、ときには独りで、じっくりやるのも乙なものだ。