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美術遊行・KAMU kanazawa
去年、大阪にいる大学の友人と金沢旅行をしてきた。
何か目的があって旅行を決めたわけではなく、ただ
「旅行したいね」
「場所はどこがいいかな」
「お互い同じぐらいの距離移動する感じで探そう」
「金沢いいじゃん」
といった具合に金沢旅行に行くことが決定。
友人と私は美大生だったこともあり、自然な流れでKAMU kanazawaという現代アート施設を巡ることとなった。
KAMU kanazawaとは
「KAMU kanazawa(カム カナザワ)」は、 2020年6月に誕生し、金沢市中心市街地内に複数箇所スペースを有する回遊型の現代アート美術館です。「アートは世界を見る窓」をテーマに、様々な現代アートをコレクションし、展示を行います。 金沢の観光スポットとして定着し始めており、21世紀美術館のプールで有名なレアンドロ・エルリッヒの作品《INFINITE STAIRCASE》や、 写真家・森山大道を代表するモチーフである唇をプリントした空間《Lip Bar》をはじめとする世界で活躍するアーティストの作品に出会うことができ、現代アートを楽しんでもらうと共に、都市の魅力を発見してもらう活動を行っています。日本の美術館としては珍しい私設の美術館KAMUと一緒に金沢の文化芸術を楽しみましょう。
KAMUは一つの建物で完結せず、金沢の街中にKAMUの施設が点在しているのが私的に大きな特徴だと思っており、アートを楽しみながら金沢の街中をぶらぶら出来るのがとても楽しい。
現代アートはよくわからない部分も多いけど、KAMUは例え現代アートが得意でなくても、ライトに楽しめる気がする。
では、回った順番にKAMUのアートを紹介していこう。
KAMU_center
まず最初はKAMU_centerでチケットを購入し、他の施設の場所が記された地図をもらう。
この地図も新聞紙のような風体で、なんとなく持ち歩いていて気分がいい。あと黄色い表紙がおしゃれなので、写真に写り込ませるのにもちょうどいい。
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KAMU_centerの1階部分には21世紀美術館のスイミング・プールでも有名なレアンドロ・エルリッヒの作品が鑑賞できた。
無限に続くように錯覚する螺旋階段のインスタレーション「インフィニットステアケース」はとても写真を撮りたくなる。
実際KAMUは全て写真OKなので、写真を撮る行為が当たり前な現代にぴったり。
彼の作品や彼自身にはあまり詳しくないので、てんで的外れなことを言ってしまうかもしれないが、彼の作品を見ていると「親しみやすさ」や「楽しさ」を感じる。
難しいことを考えずにまず触れることが出来るので、初っ端にこのアートに触れられるのはとても良い構成だなぁと思った。
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KAMU_centerの2階に上がるとステファニー・クエールの「烏」という、すこし荒削りでどこか抽象的なカラスの粘土彫刻たちを360度いろんな方向から鑑賞できる。
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荒削りであるものの、その分余白から今にも動き出しそうな生命力を感じ、カラスの愛らしさや知性を想起させる。
2020年にここを訪れたときはステファニー・クエールの他の動物彫刻が展示されていたが、その時はさまざまな動物たちがいた。そちらも生命力や迫力を感じた。
またしても詳しくないため正しい感じ方か分からないが、作者の自然を真摯に見つめる目を垣間見るような気がした。
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KAMU_centerの3階には桑田卓郎の陶器を鑑賞することが出来る。
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ポップでキャッチー。侘び寂び的な茶道具とは対照的な陶器たちが目に眩しい。
飛び出たり、溶けたり、剥がれたり。とても動的な大小様々な器たちは非日常的で見てみて楽しい。
茶器の他に大きな作品もあり、陶芸に詳しくないために、「どうやってこんなへばりついたものが溶けたような造形で焼けるんだ??」と興味深かった。
また桑田卓郎の作品、後ほどまた出会うことになる。
KAMU_sky
KAMU_centerの後は、KAMU_skyという金沢の東急スクエアの中にある施設へ移動した。
最上階まで上がり、屋上を経由して建物の中に再度入ると、ゲームに出てきそうな少し薄暗くて、広々とした螺旋階段。
どこか頭上から鳥の囀りが聞こえてきて、地下施設のような、でも外のような、不思議な開放感も感じながら下へ降りていく。
一番下には鳥籠のようにカッティングされたダンボールがポツンと置いてある。
しかし中には何もおらず、ただ鳥の囀りが聞こえてくる。
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こちらは潘逸舟の「ほうれん草たちが日本語で夢を見た日」という展示。
最初に渡された地図には作品の解説がちらりと載っていたので、そちらを読むと作者がほうれん草の収穫体験をした経験からインスピレーションを得て制作した作品らしいということがわかった。
正直な感想、掴みどころなさがまさに現代アートという感じがしてとても良い。
ただ、この場にいる時に感じた感情がまさに作者の感じた感情なのかもしれないなと、勝手に思った。
076-
東急スクエアの1階に戻り、「076-」というKAMUのミュージアムショップに寄った。
こちらでは作品集などが購入できる他、飲食もできるスペースになっており、例に漏れず通常のミュージアムカフェとは一線を画す。
まず座るスペースが工事現場を思わせる足場となっていて、なんか面白い。差し色の黄色もなんだか素敵。
作品集もレジで購入するのではなく、自動販売機で購入するというスタイル。面白い。
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また特にテンションが上がったのが、KAMU_centerで出会った桑田卓郎の作品でエスプレッソが飲めるという体験ができる。
自分で好きな器を選び、足場のようなベンチでエスプレッソを楽しんだ。
このエスプレッソも苦味の中にフルーティな味を感じて美味しい。
使用するという形でアートを楽しめて、とても良かった。
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また、076-のレジ裏にも、ちょっとした展示があった。
シルクスクリーン、木材、プラスチックの板など、様々な素材が、ランダムな大きさに切り分けられパイプに括り付けられている空間。
手で触ることもできて、背伸びをしながら触ってみた。
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カラフルで、なんとなく楽しい。
KAMU_SsRg
続いて行ったのはKAMU_SsRgという施設。
こちらに移動する最中、金沢の街を歩くのだが、その道中が川沿いで金沢らしさを感じる。
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各建物と道路の間に川が流れており、建物に入るには小さな橋を渡るのだが、なんだか他の都市ではなかなか見ない光景な気がする。天気も相まって清々しく心地よい道のりだった。
こちらで鑑賞したのはサイモン・フジワラの「Once Upon a Who?」という映像作品。
Whoというクマのキャラクターが、己は誰なのか問いかけてくる作品だった。
ミュージカル調の曲に合わせ、英語の歌詞で問いかけられるのだが、ちゃんと日本語訳のカードがあるので内容は理解できる。
メッセージ性がはっきりしていて、鑑賞しやすかった。
また、がっつりくまのプーさんが出てきて、「そういや権利切れてるんだ」と少し面白かった。
内装もポップな色合いで、素敵。
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KAMU_k=k
そこから移動して京都の四条通を彷彿とさせるアーケードを歩いて到着したのはKAMU_k=kという施設。
ここでは潘逸舟の「波を掃除する人」という映像作品が展示されていた。
暗い室内で、ビーズクッションに身を沈めて白黒の無音映像を鑑賞する。
無音映像は岩の上に立つ箒を持った人が、ただひたすら岩に寄せては引く波を掃いていくというもの。
一見難解さが際立つが、ずっと見ていると心地よい。
ひたすら徒労な作業をしている映像を、ビーズクッションに寝転がりながら見ているのはなぜか癒しを感じる。
ほっとかれればいつまででもそこにいれそうな感覚だった。
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パブリックアート
次のポイントへ移動する道中、森山大道の「唇:エロスあるいはエロスではない何か」という作品を探しながら歩いた。
というのもこちらの作品、施設の中に展示されているのではなく、街中の電柱に広告のような形態で写真作品が貼り付けられている。
所謂パブリックアートというもので、いろんなところにエロスあるいはエロスではない何かがある。
それを探しながら歩くのもまた楽しい。
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意外とどの街にもパブリックアートはあるものだが、意識して鑑賞することは少ない気がする。
ただ、こういう機会があると注目して鑑賞出来て、KAMU関連以外の銅像など街中にあるパブリックアートへもアンテナが張るような気がする。
金沢新天地
電柱のパブリックアートを探しながら到着したのは「金沢新天地」
ここは施設ではなく街の一角で、バーやスナックなどが立ち並ぶ夜の飲屋街。
なんとなく京都の先斗町や大阪の新世界を想起した。
ここでも森山大道の写真作品が見ることが出来る。
店々の軒先にモノクロ写真のコルトン看板が掲げてあった。
レトロな街並みにとてもマッチしていて、きっと夜来たほうが映えたんだろうなと思った。
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KAMU_L
そのあと訪れたのはKAMU_Lという施設……というよりバー。
森山大道の「リップバー」という夜になれば実際にバーとして営業するお店に行った。
昼間は開放されていて、自由に中に入れるようになっている。
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中は全面唇のイラストで覆われていてインパクト大。
写真を撮るのが楽しかった。
なかなかディープなところにあるので、夜に来るともっと違う感覚が楽しめそうだった。
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ちょっと小話を挟むと、KAMUを巡っている間、施設のほとんどはほぼ貸切だった。
おそらく平日に巡ったこともあるんだろうが、なんだか得した気分。
KAMU_Black Black
最後に訪れたのはKAMU_Black Black
黒川良一の「レーテー」というインスタレーションを鑑賞した。
暗闇の中で強いストロボ、レーザー、重低音が織りなす約9分間の現代アート。
とにかくかっこいい。
意味深でクールなアニメのオープニングの中に入ったような感覚になる。
全身でアートを体感できる、現代アートらしい展示だと思う。
一緒に行った友人はここが一番気に入ったようだった。
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以上でKAMUは全て回り切れた。
最後に
KAMU kanazawa。
私の中でトップ3には入る、好きなアート施設である。
実は2020年に一度だけ一人で訪れたことがある。
その時はまだ施設数が少なく、展示されている内容も少しだけ違かった。
だが、その時からだいぶお気に入りのアート施設だった。
此度訪れたことで、より一層愛着が湧き、トップ3に入るとまでなった。
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個人的に現代アートは、どれだけアートに対して当事者になれるかが楽しめるコツだと思っているのだが、KAMUのアートは簡単に当事者になることができると思う。
私がここで言っている「当事者になる」というのは、「この絵家に飾りたいな」など、実生活にその作品を混ぜる想像をすることや、「この作品どんな意味が込められているんだろう」と想像する、解説を聞いて「なるほど」と思うなど、ある程度積極性が必要な作業であると私は思う。
KAMUでは街中を歩き、アート作品を「探す」
「インフィニットステアケース」などは、作品の中に「入る」
076-ではアート作品として鑑賞した器を、実際に「使用する」
そして「写真を撮る」「触る」など、簡単に積極性を持つことができ、体験を通して当事者になりやすい。
私は現代アートが好きだ。
だが知識に乏しい。そんな私にとってKAMUはとても手軽に楽しくアートを楽しむことができる最高の施設だ。
ぜひもっとアートを勉強し、より強い積極性を持ってまた訪れたい。
金沢、いい街だ。