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起立性調節障害にかくれていたもの⑶

7月6日(木)
この日私は仕事から急いで帰宅し、
家にいたうみを車に乗せ、
小学校にりくを迎えに行き、
昨日行った総合病院に向かいました。

脳外科部長の外来日は、月曜日と水曜日です。
この日は木曜日…。
この子たちのために予定を組んでくださったのだと思います。

昨日の話ではまだ小3のりくがMRIを怖がって検査出来ないかもしれないので
(りくの歳だと3割くらいの子が怖がってできないそうです)
眠らせて検査するかも?というお話だったのですが、
りくを見たDr.が、小児科Dr.に電話をし、
「昨日話した子来てくれてるんやけど…うんそう。
 おとなしそうな感じ。とりあえず来てくれる?」
と、小児科Dr.を呼びました。
年齢的に小児科も関係してくるのかな?と思ったのですが、入退院の繰り返すうちに理由がわかりました。
りくの年齢だと点滴等の針を入れるのは小児科医になるからですね。
眠らせるなら、鎮静薬注入のためのルート確保をしなくてはいけないので、連絡したのだと今ならわかります。

「こんにちはー!りくちゃん?」
元気いっぱいの小児科Dr.が入ってきて…、
「どんな検査するか見に行ってみる?
 機械とかどんなんかわからんもんなぁ。
 大丈夫大丈夫!うるさい音はするけど痛くないし、
 ヘッドホンするから大丈夫!」
と、りくに説明してくれて、りくが心の支えに持ち込んだイルカのぬいぐるみを「可愛いなぁ♡」とほめて気持ちを和ませてくれて、なんだかとても素敵なDr.だなぁと思いました。

そして同時に、このDr.見たことある…と。
「じゃあお母さん、ちょっとりくちゃんとMRI見に行ってきますねー!」
と、りくと手を繋いで診察室を出ていきました。
私はハッとして、
「もしかしてA先生ですか!?旧姓が…」
と主治医さんに聞くと、
「あぁ、そう。えぇ?知り合い?」
私は慌てて診察室のドアを開け、少し向こうを歩いている2人の背中に向けて、
「A先生!!」
と叫びました。振り向いた小児科医さんはおどろいた顔をしていて、
「私そらの母です!」
「え?え?えー!?
 そらくんの?
 え?じゃあこの子そらくんの妹ー!?」
「そうなんです!またお会いできるなんて!
 お世話になります!」

そのやり取りを聞いていた脳外科Dr.もびっくりされていて、
そらが生まれてすぐにお世話になった小児科Dr.がA先生だったこと、
A先生が異動されたあと、私たちも引っ越すことになり、
そこでまた再会したこと、
そして今回また再会したこと、
を話しました。

そらの本名がちょっと変わっているので、A先生の印象に強く残っていたと、2つ目の病院で再会した時に教えてくれました。
今回は3つ目の違う病院での再会。
2回目は自宅近くの地域の総合病院でしたが、今回は自宅からは車で1時間離れた県内でも存在感のある総合病院です。
もう運命だと思いました。
A先生とお会いできたことが、どれほど心強かったか…。

りくがMRIの説明を受けている間、うみの話になりました。
ピルを服用していることを伝えると、
「もう調べようか。お母さん保険証とか持ってきてる?持ってきてる!偉い!」
と、うみの検査も決まりました。
この時もまだ、
うみがカラオケの時に手がしびれていたこと、
マイクを持つ手が下がってきていたこと(脱力)
泣いたとき顔が痺れて、言葉も出なくなっていたこと…
が症状だと、私もうみも認識していませんでした。

A先生が検査に対する見通しをもたせてくれたこと、
検査をしてくださるスタッフの皆さんがとても優しくて、イルカの持ち込みを快く許可してくださったこと、「えらいねぇ!」と褒めて気持ちを支えてくださったこともあって、
りくは眠らずに無事にMRIを受けることができました。
と言っても、やっぱり不安で、
「お母さんも来て」
と言われ、私も初めてMRIの検査室に入ったのでした。
あの大きな音はなんなんでしょうね。
突然音が変わってブザー音がしたりして、大人の私もなんだかドキッとしました。
りく、よくがんばりました。
検査室のスタッフの皆さんもとても優しくて、
「この年齢でMRIできるのすごいよ!」
ととにかく褒めてくださり、りくもまんざらでない感じでした。

うみの検査も問題なく終わりました。
時間は17時をまわり、
病院内がしーんと静まり返る中、
診察室の前で私たちだけ呼ばれるのを待っていると、
診察室のドアが少しだけ開いて脳外科Dr.の顔半分が見えました。

「ちょっと…先にお母さんだけ入ってもらおうかな」
2人にニコッと笑って「ここで待っててね」と言ったものの、主治医さんのその言葉に‘’ああああああああぁぁぁ”と心の中で叫び、
2人もそうだったんだーと思いました。

まずはりくのMRI画像を見せていただきました。
素人目に「ここだ。閉塞してるの…」とわかりました。
左右対称にきゅっと狭まった場所がありました。

次に、うみのMRI画像が映し出され…
「うそ…………ない………」
と呟いたと思います。
閉塞どころか、そらとほとんど変わらないあるべき血管がない画像でした。
「僕も何回も見たんだけど…この先がないんだよね…
 妹ちゃんたちも…もやもや病だね…」

喉の奥がヒュッとなった気がします。
「ご主人にも来ていただいて、説明がしたいんだけど…お仕事急に休めるかな?」
「すぐに連絡します…子どもたちのことを大事に思ってる人なので、休むと思います」
その場で電話をしてもいいと言ってくださったので、主人に電話をかけました。
何コールしたか分からないくらい長くコールしたと思います。
『はい』
主人の声がしました。
「検査終わった。うみも…りくも…っ」
その先が声にならず、察した主人が
『分かった』
と優しく答えてくれました。深呼吸して
「Dr.が夫婦そろって説明したいって。仕事休める?」
と言うと、横から
「明日、午後から無理ですか?」
と言われ、‘’え?明日?来週中とかでなく?”と驚きながらも、
「明日、休める?昼からで大丈夫みたい」
『わかった。今から段取りする。
 明日の午後で話進めといて』
そして、翌日、夫婦そろって脳外科Dr.と話をすることになったでした。

この日検査結果はまだ娘たちには伝えず、
明日、検査入院等の日程が決まってから伝えることになりました。

「おかあさーん。まだー?」
診察室の外からいつもと変わらない娘の声が聞こえました。
私はまた深呼吸をして、笑顔で
「ごめんごめん!お待たせー!」
と出ていきました。
「お兄ちゃんのこともお話して時間かかっちゃった!
検査結果は明日分かるからお父さんと聞きに来るね」

病院の外は少し暗くなっていて、時間外出入口から帰りました。

地方の総合病院。
兄弟姉妹3人もやもや病という診断に、
脳外科に激震が走ったのでした…。

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