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NHKドラマ「なつぞら」レビュー(清原果耶出演部分のみ)
清原果耶の朝ドラ出演第2弾である。
このドラマは、リアルタイムでは見ていない。
映画「青春18×2 ―君へと続く道―」のレビューで話題となっていたので、清原果耶出演部分のみを配信サービスで視聴した。
その後、BSで再放送されていたので、第14週及び第24週から第26週(最終週)までを録画して視聴した。
この「なつぞら」と言う作品、朝ドラの100作目記念作品。
歴代の朝ドラヒロインがレギュラーやゲストとして10人以上出演したことでも話題となった。
ドラマの特番も配信されており、出演した朝ドラヒロインを知ることができたが、そういえばあの人もこの人もという感じで面白かった。
主人公のなつ(広瀬すず)の育ての母役の松嶋菜々子を始め、ゲストで岩崎ひろみも出でいたらしい。
清原果耶は、主人公なつの生き別れの妹千遥を演じたが、この姉妹の実母は戸田菜穂だった。
清原果耶出演部分だけでも、千遥の養母は原日出子、義母は浅茅陽子、なつの兄咲太郎の妻は比嘉愛未、なつが勤める制作会社の社長は貫地谷しほりだったから、NHKはなかなか気合いが入っている。
特に、浅茅陽子の義母っぷりは、なかなかインパクトがあった。
ドラマの内容も、朝ドラ的なものを意識しているようで、
・戦中から戦後の復興期までという時代設定
・その世界のパイオニアとなる職業女性(この作品ではアニメーター)をヒロインが演じる。
など、これぞ朝ドラという感じだ。
ただ、劇中劇ならぬ劇中アニメがあるなど、実験的な側面もある。
このドラマで広瀬すずの演技を初めてじっくりみたが、想像していたよりは上手(失礼)。
朝ドラなので、多少大仰に演じているものの、明るく、はつらつとして、前向きな典型的な朝ドラヒロイン役がぴったりはまっている。
対照的に清原果耶が演じた妹は、
・4歳のときに戦争で両親を亡くす。
・兄咲太郎(岡田将生)と姉なつと浮浪児として過ごすが、千遥だけ親戚の家に預けられる。
・親戚の家で辛く当たられたため、7歳で家出をする。
・見ず知らずの復員兵士に連れられ、東京に来るが、置屋のおかみ(原日出子)に売られる。
・芸者の修行しながら、置屋のおかみの養子として不自由なく育てられる。
・芸者の見習いとしてお座敷に出ていたときに、料亭の次男に見そめられて、18歳で結婚することになるが、結婚するに当たり、義母から「結婚の支障となるから、実のきょうだいとは縁を切れ」と言われる。
・縁を切る前に、きょうだいにひと目会いたいと姉のなつが暮らしていた北海道の農場を訪ねる。
・姉のなつと電話で話をするが、なつたちに会う前に農場から姿を消す。
と過剰なまでに薄幸な役で、これも朝ドラっぽい。
もはや「生き別れ」って言葉は、朝ドラぐらいでしか使われないのではないか。
姉のなつが住んでいた北海道の農場を訪ねた時の千遥は、ツインテールではなくお下げ髪にピンクのチェック柄のワンピースを着ているが、その表情には笑顔はなく、薄幸の美少女感が振り切れていた。
この農場で、生き別れの姉なつと電話をするシーンがあるのだが、やっぱり泣く演技がある。
設定からすれば、泣かないのはかなり不自然なシチュエーションだが、幼い時に生き別れて、10年以上経ってからその声を聞いただけで、姉の声ってわかるものなのか。
それはともかく、薄幸の美少女には、やっぱり涙が似合ってしまうんだな。
朝ドラなので、概ね大仰な演技なのだが、この場面の清原果耶はシリアスで抑えたトーンで演じていて、ドラマのトーンからちょっと浮いている。
なつや咲太郎に会ってしまうと元に戻れなくなってしまう、なつが北海道で幸せに暮らしていたことが分かっただけで十分だと、きょうだいに会わずに農場を去る。
東京にも戻る途中の帯広でなつに手紙を書く。
そこには、きょうだいと離れてからの千遥の生い立ち、今のなつに対する気持ちがしたためてあった。
手紙と回想シーンでの説明はやむを得ないとして、関係者一同の前でなつが千遥からの手紙を読み上げるってのはどうなのよ。
なつと兄が読んだ後で、なつから手紙の内容を説明する演出でよかったんじゃないの。
生き別れのきょうだいがようやく再会しようとしているのに、結局きょうだいの縁を切ってさよならをしなければならないという切なすぎる展開で見せ場なのに、プライベートな手紙の朗読会はなかろう。
千遥の手紙の追伸に、千遥の記憶の中の兄と姉の姿がイラストで描かれているが、置屋で芸者見習いをしている千遥のイラストがうますぎて違和感あり。
その後10年ほどして、千遥は、なつが勤めるアニメーションスタジオに子供を連れて現れて、なつと再会するのだが、この時の年齢設定が30歳くらい。
髪型、メイク、服装もそれっぽくしているのだが、完全に訳ありで、やつれた子持ちの三十路女にみえる。
演じるのは17歳の清原果耶。
前回出演時が、お下げ髪にピンクのチェック柄のワンピース、人知れず農場を去る時は、姉のなつが着ていた緑のチェックシャツにデニムのオーバーオールを着たままだから、そのギャップが振り切れている。
放送当時も18歳と30歳の役を17歳の清原果耶が演じ分けていたことに、驚く声が多かったようだ。
「千遥、いや清原果耶…おそろしい子!(褒めてる)」という当時のツイートが端的にその状況を表している。
清原果耶が出演した映画「護られなかった者たちへ」の監督をつとめた瀬々敬久監督も、この映画の舞台挨拶で、「なつぞら」での清原果耶の演じ分けに触れ、本当に驚いたと語っていた。
映画関係者でも話題になるぐらいのインパクトはある。
幸せになったはずの千遥だが、
・料亭を経営していた料理人でもある義父から日本料理の手ほどきを受ける。
・その腕が認められ店を任されるが、義父は他界。
・夫は他に女を作って、家に寄りつかなくなっていて、千遥は離婚をするか悩んでいる。
そんなに不幸な設定にすることないのにと思うぐらいの薄幸設定だが、和服姿で料理をするシーンもあり、またこの和服姿が様になっている。
これをみて17歳が演じているとは思うまい。
清原果耶は、なんか和服が似合うんだよね。
千遥がなつの職場を再び訪れ、離婚の決意を姉であるなつに話すシーンがあった。
結婚するならきょうだいと縁を切れと義母に言われたが、離婚するならきょうだいと縁を切る必要はなくなる。
料理人としての仕事も、住む場所も、場合によっては子供を手放すことになるかもしれない。
でも、もう子供に嘘をつきたくないとなつに「お姉ちゃん」と話す。
千遥がなつと初めて二人きりで話す内容が離婚の決断というなかなかシビアな状況にあって、千遥が泣かないことはあり得ないのだが、その泣き方がまあすごい。
セリフに合わせてこのタイミングというところで涙が頬を伝い始めて、あとは堰を切ったように涙がこぼれ続ける。
ただ、感情があふれる表現は涙と表情だけで、話すトーンはほとんど変わらない。
ようやく再開できたきょうだいと縁を切ってまで結婚をしたのに、その夫婦関係は破綻している。
離婚すれば、職も、住まいも、一番大事な子供さえ失いかねない、そんな状況で離婚を決断するというのは余程強い思いが千遥にあったと考えざるをえない。
普通であれば、娘が大きくなるまでは、あえて状況を変えるような決断はしないのではないか。
娘が小さいのに、千遥にこんな大きな決断をするきっかけになったのは、アニメーターとして活躍する姉なつの存在ということになるのだろう。
空襲で焼け出された後、なつたちとともに生活していた信哉が「あの千遥ちゃんがまた家族になったら、僕の戦争もやっと終わる気がするよ」といったが、千遥も戦災孤児としての呪縛から逃れ、「奥村千遥」として生きる選択をした時に彼女の戦争が終わるのだろう。
そして、なつと咲太郎とようやく家族に戻れる。
そんな千遥の過去、性格を踏まえての演技だと思うが、17歳という年齢を抜きにしても、ここまで繊細な演技ができる俳優はそんなに多くはないのではないか。
千遥のこれからは、義母をいかに説得できるかにかかっているが、自分が女将を務める料理屋「杉の子」で、義母と夫に対峙する千遥の養母と千遥きょうだい3人。
・義母(浅茅陽子)には千遥が養子だったことは結婚当時からばれていたが、浮浪児だったことまでは知らなかった義母は激怒。
・離婚を申し出る千遥に、義母は千遥が離婚しても、千夏は杉山家の孫だという、よくある展開に。
・しかし、千遥の亡くなった父親が千遥の義父と同じ料亭で働いていたかもしれないことが発覚。
・亡くなった夫の味を継げるのは千遥しかいないので、離婚後もこの店で働いてほしいと義母からいわれ、一件落着。
結果的に、千遥は、雇われ女将になって娘とともに、今いる料理屋で住み込みで働く形になった。
離婚するので娘の名字は杉山から光山(養母の姓)に変わってしまうが、それ以外はほぼ環境は変わらず。
元義母が生きているうちは安泰か。
なつと咲太郎とようやくきょうだいに戻れて、子供を手放すこともなかったという朝ドラ的なハッピーエンドでよかった。
広瀬すず演じるなつが太陽ならば、清原果耶演ずる千遥はまさに月。
演じた女優ふたりのイメージそのものかもしれない。
対照的な役柄ではあったが、なつ役が広瀬すずにぴったりだったように、あの10代と30代の演じ分けを見せつけられたら、千遥役は清原果耶以外に考えられない。
この役もまた実質3週分しか出演がないにもかかわらず、泣くシーンが5回ぐらいあった。
清原果耶のドラマデビューは14歳の時のNHK朝ドラ「はるが来た」だ。
その約3年後の17歳のときが、この「なつぞら」。
その2年後には、「おかえりモネ」の主演のオファーを受けている。
このほかにもNHKのドラマに多く出演している。
派手さはないが清潔感のある演技派なので、NHK好みというところもあるだろう。
10代のうちに主演までつとめてしまった朝ドラの出演は当分ないと思うが、次はいよいよ大河ドラマの主演か。
事務所の先輩の吉高由里子は、NHK朝ドラの主演をしてから大河ドラマの主演をつとめるまで結構な年数がかかっているが、清原果耶に対するNHKの寵愛ぶりをみると、20代のうちに大河ドラマ主演のオファーがあっても不思議はないが、果たしてどうなるか。