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旅に出た月次

最愛のうさぎ、月次が旅に出ました。15年の大往生。最後の半年は会えずじまいだったけど、私は彼と、少し不思議な関係性を築いていました。

お姉ちゃんの家にいる月次に会いに行った時の日記。

うさぎが私の足の上に寝っ転がった。
トゥットゥットゥッと、小刻みにうさぎの鼓動が伝わってくる。
人の10倍の速さで、うさぎの命は進んでゆく。
生々しい生の証に、夜風がそそぐ窓辺で私は静かに圧倒され、本を読む手が自然と止まった。

「日常のステップ #34 鼓動」より

この10倍の速さの命がとうとう尽きたのだのだと。頭ではわかっているんだけど、それでもまだ日本に帰ったら、もふもふであったかいあの命がぴょこぴょこ跳んでいるんじゃないかって、なんだか期待してしまうのだ。zoomでのミーティングを部屋で終えた後、お姉ちゃんに電話した。最初は、月次の最期を看取ったお姉ちゃん(と彼氏さん)が心配でかけたんだけど、月次の身体が横たえられたお花でいっぱいの箱を見て、そして「動物ってね、亡くなった後24時間以内なら、声が聞こえるんだって」と言われて、私は堰が切れたように思いがけず大粒の涙を流していた。「月次ありがとうね、もう一回会いたかったよ。」それが聞こえているのかいないのか、月次はまるで眠っているかのように目を閉じていた。

私はあんまり動物に好かれるタイプじゃないみたいで、友達や昔付き合っていた人のわんちゃん猫ちゃんと触れる時は、かなり緊張していた。月次が家に来た時も、なんかそこにいるな、という感覚だった。月次は抱っこが好きじゃないので、母はよくもっと可愛いウサギがよかったとか言っていたのを思い出す。でも家族はみんな気づいていた。月次には、愛想とは別の、独特の魅力があった。

私がちょっかいを出すと月次は逃げていくけど、私が床に寝っ転がっていると彼は時々そのそばによってきて寝っ転がってくる。私の部屋は物が多くて迷路みたいなので、月次はよく私の部屋に逃げ込んでは、お姉ちゃんが必死に探しにきていた。ソファに座っていたら、私の顔を踏み台にして跳んで行ったり、そのお礼なのか甘えてきたり。お姉ちゃんは、「サリと月次は友達なんだね」とよく言っていた。そして、そんなツンデレな月次に、私は静かな愛着をずっと心に宿していた。

アメリカに持ってきた、月次の絵。これはかなり昔に描いたものだったけど、寮のドアに貼って、帰ってくるたびに月次が迎えてくれるような気がしていた。

初対面の人何人かに、「サリはうさぎみたい」と言われて、なんだか嬉しくて、気づいたら部屋にうさぎグッズがたくさん増えていた。洗顔するときのうさぎの耳がついたヘアバンド、うさぎの形をした読書灯、友達の妹ちゃんに編んでもらったうさぎのぬいぐるみ、帽子を被ったうさぎの小さな置物。

月次、君がくる前の人生には戻れないよ。きてくれてありがとう。
無事に三途の川を渡って、向こうで元気に跳びはねててね。


どれがぬいぐるみか月次かわからない写真

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