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31歳 山頂で作るパエリャは格別
友人ホセ・マリアの実家に泊まった翌日、山頂でピクニックをすることになった。
彼の親戚も集まって10人ほどで車を上へ上へと走らせた。スペインの山はゴツゴツした岩山で木があまりなくてっぺんまで車で行ける。山のふもとから頂上を見ると、あちこちに牛が見えたりしてとても不思議だった。樹木の多い日本の山では見えない風景だ。
4台の車から次々と荷物を下ろす。野菜、肉、水の入ったタンク、大きなパエリャ鍋、プラスチックの皿やコップ、そして、五徳と小さなプロパンガス。山の頂上で料理をするのだった。ピクニックなんてレベルではない。
さっそくみんな慣れた手つきで野菜を切り始めた。彼らはまな板を使わないで野菜を手に持ったまま小型ナイフで上手に切っていく。サラダを作る人、肉を切る人、炒める人に分かれて手際よく料理が進んだ。赤ん坊を抱っこした私ができることはサラミやハムを並べることぐらいだった。
大勢で食べるパエリャは格別だった。中に入っている具材は家にあったもので、エビは入っていたがムール貝は入っていなかった。でも、とてもおいしかった。おいしくて2回もお代わりした。初めてビッキーの家でパエリャをごちそうになった時、作り方を聞いたことを思い出した。
ビッキーは、「中に入れるものは何でもいい、これを入れなきゃパエリャじゃないなんてことはないんだから、好きに作ればいいのよ」と教えてくれたのだ。そうスペイン人が教えてくれたことで、我が家のパエリャはその時その時に用意できるもので、その後も夫が美味しく作ってくれる。
山頂でのおいしい食事が終わるころ、みんなのお皿を見ると結構な量で食べ残しがあった。それを次から次へとゴミ袋に入れている。なぜきれいに食べないのかと思った。私は日本人だからなのか、食べ終わった茶碗やお皿に食べ物がついていることがなんとなく許せなかった。特にご飯粒が・・・。それもスペイン人全員のお皿がそうだった。なんかすごくもったいないと思った。コメに対する思いの違いなのかもしれない。鍋にもパエリャが残っていて、それも捨ててしまうのかと思ったが、さすがにそれは保存容器に入れていた。
食事のマナーは国によって違うのはわかるが、食べた後もこんなに違うとは驚いた。彼らが品のない人ということではない。
それよりも、そこにいたスペイン人が私たちのお皿を見てとても驚いていた。ごはん一粒も残っていなかったからだ。日本人はみんなそうするのかと聞いたので、「そう」と答えると「何なんだ日本人は!」と仰天していた。
こういうことこそ、生きた異文化交流というのだろう。