64歳 快適な寝具を求めて
私が寝ているベッドは木の枠に分厚いスプリングマットが乗っている簡単な作りのもので、確か1万円ぐらいで買った安いものだ。
このベッドを使い始めた頃はマットにシーツを敷いて寝ていたのだが、冬になると背中が寒く、試しに木綿綿の布団を敷いてみたらとても暖かく、それ以来マットと敷布団を組み合わせて寝ている。格段に快適になった。
この組み合わせは、夏も布団が汗を吸ってくれるので快適に眠れることが分かった。そして、実家の押し入れに眠っていた布団を何組かもらって、綿(わた)の打ち直しに出した。打ち直しとは、布団屋で中の綿(わた)をほぐしてきれいにしてフワフワの綿に作り替えて、もう一度初めから布団を作ってもらうのだ。そうして家族全員のベッドに布団を敷いた。
私が小学生の頃は母が家で布団を作り、子供の私も手伝わされた。6畳間で布団のサイズに縫った布を広げてその上に綿(わた)を広げていく。何枚も何枚も重ねて形を整え、四隅を糸で留める。その上に新聞紙を置いて全体をクルッとひっくり返す。新聞紙を取りだして端を整えて、中の綿が動かないように所々縫い留める。最後に開いているところを縫って出来上がりだ。
できたばかりの布団は高さが20cmもあってフカフカで気持ちがいい。その感触を知っているだけに何年かに1度の打ち直しはワクワクしたものだ。
約15年ほど前、リサイクルショップでラグビーボールほどに小さく丸まった羽毛布団が1000円で売っていた。品質はどんなものかわからないが安いから買ってみた。家に帰ってヒモをほどくとラグビーボールはフワフワ膨らんで大きな掛け布団になった。あまりの大きさの変化にびっくりした。カバーをかけてその夜使ってみたら、そのフワフワの羽毛布団一枚でポカポカと温かかった。
羽毛布団の存在は知っていたが、値段が高いという認識しかなかった。昔、叔母が使っていた羽毛布団は確か30万円もしたと聞いていたから、自分には到底使うことはないと思っていたのだ。
実際はいくらぐらいするのかインターネットで調べてみると、手頃な値段のものから高級品までいろいろなものがあった。アヒルよりガチョウの方が羽毛の質がいいとか、産地によっても質が違うとか、ダウンやフェザーなど羽毛の生える場所によっても質が違っていた。予算とにらめっこしながらいろいろ検討して、ダウン90%フェザー10%の羽毛が1kg以上入っているものを買うことにした。リサイクルショップで買った1000円の羽毛布団の中身はダウン80%フェザーが20%だったが十分暖かかったので、それを参考に家族全員の羽毛布団を買った。そして、重たい掛け布団はすべて処分して、冬でも羽毛布団一枚で過ごすようになった。
先日、子どもベッドに敷く布団が欲しいと娘に言われたので、息子が使っていた布団を打ち直しに出して、子どもサイズに作り直してもらうことにした。
布団屋さんで、我が家がスプリングマットに木綿布団を敷いて快適に寝ていることを話すと、
「おっしゃる通りです。最近はマットの上にベッドパッドを敷いて使う人が多いんですが、ベッドパッドの中に入っている綿(わた)は大抵ポリエステル綿(わた)なので、ビニールの上に寝ているようなものなんです。汗も吸わないし、保温効果も低い。もめん布団は一年を通して使える優れモノなんです」と店の主人が言った。
やっぱり私の思ったとおりだった。
最近は低反発なんとかやファイバーなんとかや、トゥルーなんとかなど様々な種類の敷布団が出てきたが、今のところ眠りに関しては大満足している。