父親が死んだ。あっけなかった。
責任感が強かったし、自分は強いと信じていた。
先に病気になっていた母を自分が看病しないとー
そう思っていた。
だから無理をした。手術後に。
秋だった。
イチョウの葉が半分、黄色を纏っていた。
後を追うように母親も。
冬だった。
モノクロの風景に寒さが増していた。
ひとりで住む家は寒すぎると初めて知った。
自分の部屋から廊下でたとき影が見えた。
白い影だった。
生きるのは辛いことばかりだった。
会社では絶対に泣かなかった。
家に帰ると何もやる気が起きなかった。
いつも疲れてぼうっとしていた。
自分の部屋にいるとき影が見えた。
白い影だった。
また秋が来た。
肌寒くなり、冬用の布団にしなきゃと思いながら
まだ変えずに夏布団で寝ていた。
少し寒かったけど、すごく面倒くさかった。
どうでもよかった。
夜中に影がきて冬用の布団をかけてくれた。
急に身体が暖かくなった。
「わ~暖かい。ありがとうお母さん。」
そう言うと目が覚めた。
庭木がたくさんの葉を落とし
幹が裸になっていく。
冬になった。
こたつでぼーっとしていた。
休日でも何もする気がなかった。
用を思い立ち廊下にでたときに
父親が笑って立っていた。
「あれ、元気だった?」と聞いたら目が覚めた。
いつの間にかこたつで寝ていた。
雪が降った。
空は真っ白だった。
こんなとき
天使が下りて来そうって言うんだ。
影が動いた気がした。
なんだぁ
もう
大丈夫だよ。心配しなくても。
時々泣いちゃうけど、
大丈夫だよ、死んだりしないし。
元気にやってるから。
また旅してくるよ~
影は見えなくなった。
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