48 鳥ぱっと散り卒業の日もおはよう
句集「むずかしい平凡」自解その48。
卒業式の朝の光景。
これでも高校の先生などという仕事をしているので、毎年、卒業式というものを体験するわけです。だんだん慣れてきてしまい、感動というものもあんまり感じられなくなっているのが情けないんですけれどね。
それでも、これはこちらの単なる感受性の鈍麻だけでないものもあるように思います。
形式を重視しすぎる教育現場。卒業生より来賓のほうを大事にする式次第。いったい誰のためにこの式があるんだ?という素朴な疑問。
ストックフレーズのオンパレード式辞。原稿棒読み祝辞。
それでも生徒の送辞や卒業生の答辞が生き生きしていれば救われるのに、最近はこれも去年のコピペかと思ってしまうようなものが多い。
とはいえ、やっぱり卒業式。
生徒たちが朝の光の中、登校してくる。卒業生にとっては最後の登校。
道端にかたまっていた雀が、ぱっと飛び立つ。
そんななか、「おはよう」というあいさつ。
ああ、ほんとうに貴重な「おはよう」だなと思う。卒業の日の「おはよう」のかけがえのなさ。