24 銀やんま敵の配球に惚れ惚れ
句集「むずかしい平凡」自解その24。
「敵の配球」というのは、野球のことですね。相手ピッチャーの一球一球の計算された投球に、全く歯が立たないこちらの攻撃陣。累々と凡打の山を築くばかり。
それにしても、相手ピッチャーの実に見事な配球。こちらの読みを、狙いすましたかのように外して、くやしさや苛立ちを通り越して、もうあっぱれと思うばかり。脱帽状態。
と、そんなときに銀やんまがすーっとグランドを通り過ぎる。
むかし、とても若い時に、高校野球の顧問なんかを持たされて、全く経験がないのに監督なんかもやらされて、そういえばこんなことあったなあなどとふっと思い出して句になりました。
ひとつも力を入れないで、すいすい投げてくるピッチャー。そんなにスピードがあるわけじゃないのに、コントロールがよく、無駄な力を入れないで、ぴしぴしっとストライクを取ってくる。あれよあれよというまに攻撃終了。あれ、さっき攻撃始まったばかりだったよね。
こういうピッチャーの裏には、実は必ずいいキャッチャーがいる。頭がいいキャッチャーが全体をうまく統率している。
最近の野球はどうなんでしょうね。やっぱり、力と力のぶつかり合い、みたいなのが好まれているのでしょうか。
私なんぞは、こういう、柔よく剛を制す的な選手が好きですけれどね。
言葉も同じ。力まないで、言葉の配球にじゅうぶん気を利かせて。
これが一番難しいのだけれど。