26 燕帰るぽかんと再開発の空

 句集「むずかしい平凡」自解その26。

 「燕帰る」が季語。春に南からやってきた燕が、子育てを終え、やがて秋になり、また南方へ帰ってゆく。

 あの暑かった夏の日々も終わり、涼しさが戻り、空が広く感じられる、そんな季節。

 震災から数年たったころの句ですね。復興が進み、街は再開発されてゆく。古い建物が解体され、思いもかけないところに青空がのぞいていたりする。

 あれ、ここ、もとの建物って、なんだったけ?

 なかなか思い出せない。いつもよく通っていたはずなのに。記憶なんて当てにならないものですね。

 「ぽかんと」というのはそんな気分もあらわれているかもしれませんね。作るときはそんなことはあんまり意識しなかったけれど。

 今、読み返してみると、ちょっと寂しい句ですね。

 やがて解体も済み、新しくビルが建ち、青空も、燕も見ない街になってゆく。再開発とか復興とかいうけれど、そういう言葉の中で消されてゆく人間性や自然。

 空を見ながら「ぽかんと」していられる幸せって、大事だなあ、と。

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