29 鳥渡るかつては人を迎えた橋
句集「むずかしい平凡」自解その29。
橋というのは、ふだんあんまり意識しない物体ですけれどね。でも、ふっとあるとき、田舎の橋を見たときに、これって何のためにここにかかっているんだろうな、と思った。
ほとんど限界集落といっていいような場所。しかし妙に立派な(けれど古い)橋がある。
かつては賑わい、そして多くの人を迎え入れ、何かの一大生産地として隆盛を誇ったその象徴のような橋。ところが今は…。
かつては人を迎えたものが、そこのことによって人を離れさせてしまう、ということはありますね。たとえば道路。たとえば新幹線。
便利になるからといって、建設当初はよろこんでみたものの、その後はさっぱり。むしろ、その便利な道路や交通機関を使って、地方から都心へ人が流出してしまう。人間って、先を見る目がないんでしょうかね。
それに比べて、毎年かならず鳥は渡ってくる。
空には橋などないからね。