見出し画像

日記「不変の街」

 夢でしか見ない景色がある。夢の住民である私にとっては行きなれた場所。もはやホームタウンである。数年越しの夢でも同じ舞台の夢を見るのだから不思議だ。起きれば大まかには忘れるが、それでも再度来訪した時には、昨日訪れた時のように思い出す。

 私は夢の中は、一種のパラレルワールドではないかと考えている。夢の中で生きる私も確かに私なのだ。バカでかいショッピングで最上階の小劇場に迷い込む私も、ネオ東京のような博多で新幹線に乗る私も、イオンモールで逃走中をする私も、歯がボロボロに崩れていく私も、足が鉛のように重くなり走れなくなる私も、全て私である。

 不思議なことに、夢の世界が大きく変わることはない。それどころか、違いという違いは今のところ見つけられていない。ずっと、いつかのかつての私が見た夢そのままで投影されるのだ。現実の世界は大きく変わり続ける。無いところに出来、ある所が無くなり、そしてその前の姿を思い出すことは到底難しくなっていく。

 変わりゆくということは、進むということだろう。私自身、いつかのかつての夢を見た頃とは背丈も経験も知識も変わってしまった。とても遠くまで進んできたと思う。しかし、夢は変わらない。いつでもあの頃のままだ。私は、この変わらない世界で、変わらない私を受け入れてくれる夢が見れることを楽しみに床につこう。起きれば忘れてしまうというところまで変わらない世界に、身を託そう。

いいなと思ったら応援しよう!