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日記「勇者」

 大学生の頃、バス停で佇んでいたら下校中だろうか。小学生低学年ぐらいの男子が「棒状のナニカ」を振り回してこちらに歩いてきた。傘かと思ったが、ズンズンと近づいてくるにつれて「ナニカ」が傘でないことがわかった。

 枝だ。

 それもぶっとい枝である。長さも成人男性の肘から指先までぐらい。例えるなら、初期装備のヒノキのぼう。彼は小さな体でその聖剣片手に、時折必殺技と思しきコトバを口にしながら私の後ろを通り過ぎていった。

 そのときのことを、私は雨の日、傘を構えながら思い出す。

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