【ss】したきりすずめ
優しいおじいさんと意地悪おばあさんに飼われている一羽のスズメがおりました。
意地悪おばあさんは、スズメを良く思っていませんでした。
ただでさえ貧しい生活をしているために、スズメにやる餌すらも惜しかったのです。
あるとき、優しいおじいさんが町まで行商しに行かねばならなくなりました、
当分のあいだ、帰って来れません。
意地悪おばあさんは、優しいおじいさんが留守なのをいい事に、スズメに餌を与えなくなりました。
そんな日が何日も続き、遂にお腹を空かせたスズメは台所にあった“あわ”を盗んで食べてしまいました。
それに気がついた意地悪おばあさん。
罰として、スズメの舌を切ろうとしたそのとき、スズメが言いました。
“あわ”を盗んでしまったお詫びに、スズメの一族の宝をあげますから、どうか許してくれませんか。
意地悪おばあさんは、それが本当なら許してやると言って、宝が届くのを待ちました。
しばらくして、たくさんのスズメが葛籠をひとつ持ってやって来ました。
さっさと寄越さんかい。
と、意地悪おばあさんは葛籠をスズメたちから奪いとると、躊躇いもなくフタを開けました。
すると、中から溢れんばかりの妖怪やら幽霊やら化け物やら出てくるではありませんか。
意地悪おばあさんは、“あわ”を吐いて倒れました。
打ちどころが悪かったのか、ぴくりとも動きません。
スズメたちは、当分のあいだ、ごはんに困らなくなりました。
しかし、お腹を空かせたスズメはたくさんおります。
スズメたちは“あわ”だけでなく、身も内蔵も皮も目も食べてしまいました。
そんなとき、優しいおじいさんが町から帰って来ました。
出迎えたのは、無惨な肉塊と化した意地悪おばあさんと、全身真っ赤に染まったスズメの大群でした。
それを見た優しいおじいさんは、意地悪おばあさんと同じように、“あわ”を吐いて倒れてしまいました。
スズメにまたひとつ、ごちそうができました。