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父、76歳の人生記-第12話:親友のヤッサン。その2〜はじめてのチュウ〜-

はじめに

 このnoteを書いているのは、主人公”ぼんちゃん”、の息子です。
 戦後間もない大阪出身で現在76歳の父が、自身が年老いていくことを理解しながら、自身の人生を振り返りパソコンにしたためてきた文章。
 それを私が読みやすく校正し、名前や地名は仮のものに変えながら、ほぼそのままで掲載していこうと思います。
 父が辿ってきたのは波乱万丈の人生なのか、平々凡々な人生なのか、私も楽しみです。皆様も楽しんでいただければと思います。
※”()”は私の補足です。

第12話:親友のヤッサン。その2〜はじめてのチュウ〜


 ヤッサン(現在に続く親友)の家の前がちょっとした広場になってた。
そこで三角野球やら宝踏みしたな。ブランコもあったな。よう遊んだ。

 学校で天体観測ある言うた日、夜おそうまでヤッサンと観測した。
その日かな?ヤッサンの妹の冬美ちゃんが溝のフタ踏み外してキャー言うた。 すねのとこがバーっと裂けた!ヤッサンもおれも血出てへんけど、応急処置ようせんかったな。
 チッチャイ怪我やったらハンカチでふくとか押さえて血止めるかするけど、3,4センチ位裂けとったからビックリ仰天や。
 あの時、翔子ちゃんとこのお手伝いさんに病院へ連れてってもうたんかな?誰やったかな?思い出したら今でもビビるし足けったいになるわ。
 冬ちゃん痛かったやろな。そやけど、「キャー!」いうたけど泣いてなかったな。それが救いや。

 絵を習いに行った。
 甲斐中と神泉の間のイタガキさんやったかな?文房具屋さんの2階やった。スリッパ描いたとき「ダイナミックに描くなあ」と言われたん覚えてる。 4、5ヶ月なろた(習った)かな。
 漫画はよう買うた。”少年”や”冒険王”や”少年画報”があったけど、専ら「少年」愛好者やったな。”冒険王”、”少年クラブ”なんかは一寸幼年向きやったからかな。
 ”少年”は鉄腕アトム、むすび君、矢車剣之助、鉄人28号とか、何かこう 惹きつけるものがあった。付録も良かったな。10大付録や。読み応えがあった。小松崎茂の絵もダイナミックやったな。しょうもない付録もあった。ボール紙で組み立てるやつや。

 その少年誌の宣伝に「身伸器」の宣伝があった。ひときわ目を見張るものである。あれが欲しいと夢に見た。もっと背が高かったらええのに。チビや思われんで済むのに。金持やったら買えるのに。馬鹿にされんと済むのに。

 実際ちびやったけど、ちびとは一回も言われんかった。何でかな?
その当時悩みは背低いぐらいやったな。貧乏なんは神さんが決めた事やと思てたからあんまり気にせえへんかった。
 そやけど一寸は気にしててんで。親に絶対言われへんかったもん。気い遣いやった。オトンおかんは俺のこと愛しく思てたのに、子供心に気い遣いや。 空気読んでたんやな。

 ヤッサンとこの庭で二階建ての小屋を作ったな。
 材料は病院が立てまわししてたから板切れは潤沢にあった。そやけどヤッサンとこの親はクレームつけへんかったな。子供の創造的想像力開発遊びには理解あってんな。
 普通の家の親やったら「おまえ何してんねん 庭にしょうもないもん作りやがって 狭いし はよこわしてまえっちゅうのに」でチャンチャンや。
 そうそう、ヤッサンのお父さんは、甲斐田病院に勤めてた。戦時中は「零戦」の操縦士やってん。アッツ島かな?ガンガン飛んどったんやて。零戦「藤井号」に乗ってたんかな!?(前述:ぼんちゃん家の名前が入った機体があったらしいです)
 
 それから病院が建築中、その庭でも遊んだな。
 地面掘って自分らの家を作るんや。秘密基地やな。縦1メーター、横2メーターは掘ったかな。その穴に木で壁を作り、部屋にするつもりや半分位出来た時位かな。何でか知らんけど途中でやんぺして(辞めて)もうた。
 その庭に1匹だけ羊飼うとったな。管理が半端やってんな。臭気を放ってたわ。時々髪の毛の長い兄ちゃんが来て採血しとったな。動物実験しとったんかな。 
 病院が増築しとったから飯場があった。
 土木作業員のおっちゃんがザリガニぎょうさん集めて茹でとった。ごっついええ匂いしたから食べたかったな。
 その頃やったかな。上村君言う同級が居てたな。ヤッサンとどつきあいになりかけたな。上村君すぐキレる奴やったんかな?

 紙芝居のおっちゃんがきてたな。
 ”脱線やす坊”(?)のコミックからはじまり、”蛇姫様”やシリアスな物語があって真剣に見てたな。見料は5円や。酢昆布、水飴やらタダ見は御法度や。
 おっちゃんは片腕やったな。そやけど自転車に乗って軽快に運転してたな  おっちゃんの拍子木は笛や。シンパクの演技(迫真の演技)やった。おれずっと惹きつけられてたな。
 片手のおっちゃんは年でしんどなってんやな、辞めてもうた。片手のおっちゃんの後に来たおっちゃんは、も一つ上手く無かった。というより演目が幼すぎたんかな。だんだんと見に行かんようになって来た。そうしてテレビ文化の黎明期に移るねん。 


 お菓子、駄菓子は小倉(商店)でようこうたな。
ポンセン、みかん水、ベロベロ、当てもん。暫くしたら小路をはさんで駄菓子屋が出来た。若いおばちゃんが営んでた。小倉のライバル店や。
 品数も多いし、店もサラッ品(新品)やから自然とおばちゃんの店に行くようになったな。お好み焼きもしてたかな?学校の横にかて駄菓子屋があるねん。よう芋飴買うた。二個一円やった。なんや知らんけど六甲バターも買うたな。塩味が効いてて旨かった。
 いやその前に病院の角にちっさな駄菓子屋があった。道路の上にやで。今やったら違法建築物や。西川と言うおばあちゃんが居てたな。そこの焼き芋がうまかってん。一畳半程の店や。トイレ無かったかな?何処でトイレするかおれ心配してた。しょうもない心配性や。

 その頃の女友達といえば翔子ちゃんやな。
 そやけど遊んだん翔子ちゃんの家の庭だけや。そこの庭は広かったな。なんせ医院長のお屋敷やから、上池町、甲斐田町広しと言えこれ程広い屋敷は無かった。庭には大きな木がいっぱい生えとって青々とした芝生が広がってええしの子(良いとこの子=お金持ち)や。
 割と素直な子やった。庭で遊んでヤッサンにおちょくられて、はやされてヤツデの枝のしたでチュウしたかな?!  

(第12話ここまで)

息子から

 毎度ながら父の記憶力と物価の違いに驚きますね。
そこらかしこに小屋や基地を作ったり、駄菓子屋で目一杯遊んだり。
 自身の身長について嘆くシーンもありましたね。そんなにコンプレックスに思っていたとは。私は成人し父の身長を抜かしたのですが、それに喜んでいた時、父はどういった気持ちだったのか…なんてことも考える12話でした。
 そして翔子さんとのチュウ!おそらくはじめてのチュウだったのではないでしょうか。小学生でチュウ…ませてますね。
 また次回も是非読んでくださいませ。

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