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父、76歳の人生記-第15話:セレブにコリアに義理のオカン-
はじめに
このnoteを書いているのは、主人公”ぼんちゃん”、の息子です。
戦後間もない大阪出身で現在76歳の父が、自身が年老いていくことを理解しながら、自身の人生を振り返りパソコンにしたためてきた文章。
それを私が読みやすく校正し、名前や地名は仮のものに変えながら、ほぼそのままで掲載していこうと思います。
父が辿ってきたのは波乱万丈の人生なのか、平々凡々な人生なのか、私も楽しみです。皆様も楽しんでいただければと思います。
※”()”の中は私の補足です。
第15話:セレブにコリアに義理のオカン
同じクラスにいてるP子(原文ママ)さんのセレブな生活に憧れや好奇をいだいた。
P子さんはクラスで唯一ピアノが弾けるエエシ(関西弁で”良い所の子”)の子や。そやから『P子さんの家どんなんや。一回観に行こう』ということになり興味津々や。
皆んなで垣根から覗いた。家だけ見えた。それだけや。しょうもないから皆んなすぐ帰った。
後から先生に「人の家を覗いたりしたらあかん Pさんとこは新聞記者知ってるから事件として載せてもらうとこやった」言うてビビらされた。
ある意味脅迫みたいな感じで言われた。怖い。ビビった。威圧感を感じた。
そやけどおれら覗いてんのんわかったらその時に「覗いたらあかん」とか言うて怒るとか「入っといでや」言うて対応したらええのに。
そんな対応せんといて何や大人のする事。理解に苦しむわ。
皆んな冷静になってよう考えてや。黙ってんのんは覗き事件を誘発正当化するための行為や。一寸こわい。やること大人とちゃうわ。やらしいとおもた。
Pさん一家と竹井先生に不信感沸々や。下々の気持ち分らん。おれらを見下しとってんな。アホにしとったんやな。
ほんま徳川時代劇みたいや。思い出したら心痛重なるわ。
”深窓の麗人”とちゃうで、”辛葬の冷人”や!!
山田君が授業中ようウロウロしてたな。ADHDかな?
そやけど初台高校の先生になった!?山田君の好きな漫画は”よこづな よっちゃん”や。なんであんな漫画がおもろいのんか解かれへんかった。今どうしてんやろ?
音楽を担当してる大西先生や。
アコーデオンぶら下げて、ひょこひょこしてホンマ調子もん、太鼓持ち先生や。その先生P子さんのこと呼ぶとき 「おいキ○」 「キ○」やて まるで自分の子供か親類の子呼んでるみたいや。これでお分かりでんな。イワンヤオヤ。これ貧乏人のひがみやろか。
国生君。国生けいすけ君が転校生やった。
背が高く男前や。勉強ええ、性格も全然ええ。皆んな「P子さんと国生君はええカップルや」いうてたな。
奈良に遠足に行った。電車の座席が偶然、国生君一家と同席や。ワオー。
国生君の祖父母の服見て動転した。チマチョゴリや。
そやけどおれ、全然動転せえへんふりしてたな。冷静を装うった。家も大きかった。後東さんとエエ勝負や。おれとこ市営住宅払い下げ。東原君とこ古いちっこい家や。ちょっとちゃうなっとおもた。同じ在日でも格差ある。 同じ国産でも格差あり。ちゃんちゃん!
加西君、転校生や。
この子が勉強出ける、スポーツ万能や。眉目秀麗やし中肉中背や。カッコエエ。みんなは勉強でけるか、運動ええかだけやったもん。そんな中でみんなの憧れの的やった。
おれもかっこええなとおもたで。文武両道とは加西君のためにあるんやなとおもた。
背の高いもん低いもん順。
毎日の朝礼は低いもん順。運動会の整列は高いもん順や。朝礼はしゃあないけど、運動会の整列はちょっと恥ずかしいわ。
4列で並んで4人ピッタリやったらええけど、一人だけの時は半端もんみたいやさかい、ほんま恥かしわっとおもたんおれだけかな?!
茂野君が重松さん好きや言うてたな。家まで行って話しした言うてたな
ええなぁ(*∀`*)
中高時代やな。湊通り商店街の奥の方を右に入った所に卓球場があってん。
ヤッサン(今でも親友)とよう行ったな。卓球は俺も本気で頑張ったで。ヤッサンとええ勝負してたんかな。
高校じぶんやな、その近くに「美福」言うお好み焼きがあってん。そこのお好み焼きは大人相手やったから味はいけてた。小遣いに余裕が有るときは行ってたな。ヤッサンが見つけた店や。
小学校中学校を通じてオカンはいっこも「勉強せい」なんか言わなんだ。
テストアカンかっても全然怒れへんかった。おれがあほやったから言うてもしゃあないと諦めの境地に達してたんか。それとも勉強ぐらいで人生左右されてたまるかとおもてたんかな。
オカンほんまに人間をよく理解してたんや。偏差値なんかで人生決まるかえー、とおもてたんやな。勉強あかんでも、おれに何か人間的特性あるのん期待してたんやな。
イトコ連中かしこ(賢い人)ばっかりやから、この子に勉強せい言うのん気がひけてんな。それとも義理の子やから遠慮してたんかな。一寸は言うてくれたら発奮するのになあ。
「勉強せえ」とは言わんかったけど、裏に学校の先生が越してきた時、先生が言うたかおかんがその気になったんか解らんけど、勉強習いに行ったな。
当時、塾とちごて勉強学校いうてんで。おかん近隣とのコミニケーションかて大事にしてたんやな。
(第15話ここまで)
息子から
セレブのP子さん、背の順の話、韓国人の文武両道転校生、地元の商店街のお好み焼き屋さん…。
私からツッコむとすれば『話が多方面に行き過ぎ』でしょうか。
でもこれも、父が記憶の赴くままに書いているので、脈略のない話は御愛嬌ということで、勘弁していただければと思います。
それにしても、シレッと『オカンが義理である』という事実が飛び出してきました。
ぼんちゃん(父)にとっての”オカン”=息子の私にとっての”おばあちゃん”
という存在で、義理ということは、父の父、つまりおじいちゃんは、再婚していたということ。
これを私は、成人してから知ることになります。
ずっと、父とおばあちゃんは、血の繋がっている親子だと思っていた(疑う余地も無かった)、それくらい性格も似ていたので、衝撃でした。
ぼんちゃん劇場を辿ると、初婚時代の母(父と血の繋がったおばあちゃん)の話も出てくるのかと思いましたが、この感じだと出てこないのかもしれません。
次回は父にとっての父、つまり私にとってのおじいちゃんの話が中心になりそうです。ややこしい人間関係ですが、昭和短編物語として楽しんでいただけると幸いです。それでは。