中央自動車道で拡大する「ほうとう」の勢力
高速道路のサービスエリアでの食事と言えばラーメンが定番。なんの変哲もない醤油ラーメンがやけにおいしそうに見えたりします。
ところが中央自動車道では、意外な攻防が展開中です。山梨県に入ると「ほうとう」が一気に攻め込んできて、“国民食・ラーメン”がかすんでしまうのです。
山梨県にルーツを持つ夫と結婚するまで、私は「ほうとう」という麺類を知りませんでした。“初ほうとう”時、太くてゴツい麺だけでなく、カボチャやニンジン、イモ、ハクサイなど、よくわからない具のコンビネーションに圧倒されてしまいました。
ラーメンでもない、うどんでもない、かつまた蕎麦でもソーメンでもない「ほうとう」は、あくまで山梨県の郷土料理なんだと、私はしばらくこの麺を「その他麺類」として封印してきました。
ところが、近年、中央道のサービスエリアでは「ほうとう」の勢力が増し、売り場面積は拡大の一途をたどっています。その品揃えも一気に増えました。
「蕎麦文化圏」の長野県に入っても、「ほうとう」のお土産が売られています。
ここ数年、見て見ぬふりをしてきた私ですが、もはやその存在を無視することができなくなりました。
双葉サービスエリアで私は、ついに“ハイブリッド種”の「ほうとうラーメン」を食べました。目下「ほうとう」は、ラーメンに姿を変えて、各地から集まるドライバーさんの胃袋を浸食している模様です。
長さ50センチはある?と思うほど、やけに長い麺です。これを、ラーメンのようにすすろうとすると、麺の先が左右に揺れて、頬をピシャリと叩きます。
この「ほうとうラーメン」は、ラーメンのように勢いよくすすってはダメだということがわかりました。長くて太い麺が持つ運動エネルギーをゆっくり低下させるのが食べ方のコツだといえるでしょう。
すでに「ほうとう」は“第5、第6の麺”として都内の一部スーパーが取り扱いを始めています。
もっとも平安時代には「はくたく(餺飥)」という平たい麺類があり、それが「ほうとう」の由来だとも言われています。
古くて新しい日本の麺「ほうとう」は要注目の麺類です。(元流通小売ライター)