動物たちがお出迎え 天狗温泉・浅間山荘
埼玉県秩父市からのびる国道299号を長野県小諸市を目指してひたすら疾走(なんと私は冬の期間に自動二輪免許取得)しました。初めてのワインディングは“苦行の如し”で、しかも砂利道という悪路に打ちのめされました。急カーブの崖から落ちないことだけを祈りながら、ようやくたどり着いたのが“天空の浅間山荘”でした。
「天狗温泉 浅間山荘」は、赤銅色の温泉でも知られていますが、緑あり、美食あり、そしてかわいい動物たちが出迎えてくれるお宿でもありました。アイドルピッグのルイス君、1歳を過ぎたばかりの番犬ナッツ君、そして武蔵号を筆頭とした3匹のお馬さん。この動物たちに会えただけでも、ワインディングの“苦行”に耐えここまで来てよかったと思うのでした。
宿泊客の多くが山愛好家たちで、ここをベースキャンプに朝早く浅間山に繰り出していきます。チリーンチリーンの熊よけの鈴を鳴らしながら、夕方、何人かの登山者が無事山から戻ってきました。みんな赤銅色の温泉に浸かり、静かな空間の中で疲れを取ります。
お楽しみは夜のお食事です。タラの芽の珍味やキッシュ、行者ニンニクの天ぷらなど和洋折衷のお皿の数々がテーブルに並びます。最後はこごみを刻んだ混ぜご飯と手打ちの小諸蕎麦が出てきました。蕎麦もさることながら、小諸産のお米をふわっと炊き上げたご飯は最高でした。
試してよかったと思ったのは、山葡萄と赤い実をつける五味子(ごみし)のお酒。自家製のお酒だというので、ロックで頂きました。発酵した香りが鼻に心地よく、まさにサル酒(猿が木のくぼみなどにためておいた果実が自然発酵し、酒になったもの)を思わせます。
私は小さい頃、登山家の父親と、北アルプスのわさび平小屋や双六小屋に泊ったことがありますが、当時の山小屋といえば、食事は「飯盒炊爨」、就寝は他人と「雑魚寝」だったことを思い出します(もっともカレーぐらいはあったかもしれませんが・・・)。
当時、行く先々で「登山バッジ」を買い求めたものでしたが、この宿のカウンターでバッジを見つけたときにはさすがに興奮しました(ねじ式ではなくなっていた!)。欲を言えばペナントも欲しかったです。
山荘となればその定義は「山中にある別荘」。ここも創業当時から風格を備えた宿で、昭和41年には皇太子時代の現上皇ご夫妻をお迎えし、また近年では故・坂本龍一氏が訪れています。(あさま山荘事件の“浅間山荘”とは違いますので、念のため)