やさしいインベンション
私がこのテキストに取り組み始めてどれくらい経ったのか正確には分かりませんが、おそらく20か月くらいだと思います。
私は1か月に1曲のペースで一つのインベンションを取り組んでいて、現在21番を練習しているからです。
19番と20番もまだ、先生には合格印を頂いていないので、並行して19から21番を練習しています。
私はスケジュールの事情などあり、二人の先生からピアノを教わっていて、一人はクラシックのテキストを中心に教えていただき、もう一人はジャズ寄りの先生なので、ポップスの好きな曲などを教えて頂いています。
インベンションはクラシックの先生のレッスンで中心に教えて頂いていますが、分からないところがあったり、自分の解釈が合っているか分からない時に、次にクラシックの先生に会えるまで間がある場合など、ジャズの先生にも自分の弾いている曲が楽譜と合っているか見てもらうことがあります。
そんな時にジャズの先生から、
「やさしいインベンションって書いてあるけれど難しいですよね?」
と言われました。
「はい、難しいです泣」
ともちろん答えるのですが、私は初心者なので、曲がそもそも難しいのか、自分のレベルにはまだ早くて難しいのか今まで分からなかったのです。タイトルに「やさしい」と書いてありますから、初心者の私はそのタイトル通り「これで易しい・・?」と思っておりました。やさしいインベンションのテキストには「バッハのインベンションをひく前に」と買いてあります。つまり、「バッハのインベンションはもっともっと、とてつもなく難しいのだろう」、と途方もなく高い壁を感じていました。
そんな時に先生に一声かけて頂けたことで、「それなりに難しい曲に頑張って取り組んでいるのだ」と、思うことができて、気持ちが楽になりました。
「易しい曲なのになかなか進まない」と思うとくじけそうになる日もありますが、先生からの一言で、一歩一歩進んでいる自分を「頑張っているね」と自分で声をかけてあげられそうです。
やさしいインベンションは「ポリフォニー」という分類に入るらしいです。私も詳しくはないのですが、私はポリフォニーというかインベンションが好きです。多くの曲は右手が主旋律、左手は伴奏になりますが、インベンションの特徴は、主旋律が右だったかと思うと、次に左になったりと変わります。そして、同じようなパターンが繰り返されたりします。先生のお言葉を拝借すると、右手と左手の演奏がそれぞれ会話しているような、曲なのです。音のハーモニーが綺麗で、私はそこが好きになりました。
娘もこのテキストの曲を気に入って、6番までは一緒に練習しました。そこから娘は音楽教室のテキストの曲をこなすのに忙しくなり、インベンションには触れることはなくなりましたが、特に6番は娘の方が滑らかで上手に弾いていたくらい、思い入れのある曲です。
そしてこのテキストは1番最初のページに小さな文字で
「すべての教材は、長期間にわたって完全に暗譜するまでご指導ください。」
と書いてあるのです。ということで私は、先生に丸の印をもらった後も、インベンションだけは繰り返し過去の曲も弾き直しています。
以前弾けて〇をもらった曲であっても、しばらく間が空くと(1週間や2週間ほどでも)悲しいぐらい弾けなくなっているのです。そしてまた練習してある程度弾けるようになって、また間が空いて、また弾くのが手こずる・・の繰り返し。
しかしもう一つの曲集を私はトンプソンを使っていますが、こちらはよほど好きな曲でなければ弾き直すことはありません。小さな短い曲が沢山あるので、遠い昔の曲などすっかり弾けなくなっていてゼロからの演奏かもしれません。
しかしインベンションは、最初から何度も繰り返しているので、まったくゼロからのような気持で手こずるということはありません。多少つまづく箇所があるという具合です。それも何度も繰り返すと、つまづく所も減ってきているように感じます。逆に、前は引けたのに弾けなくなってしまったこともありますが。
「自分の血となり肉となり」ということわざがありますが、自分のピアノにとって「やさしいインベンション」がそういう曲になるのかなと期待しています。私は「このテキストはやった!」と思えるように取り組みたいと思っています。