愛しの小道具
妖しくキッチュな色味で子ども心を惑わせる<探偵セット>に<スパイセット>。
駄菓子屋に行く度、西日に照らされるそれらを羨望の眼差しで見つめたものですが、女の子でしょがァと、なかなか買ってもらうことはできませんでした。
口説き落としてなんとか<駅員さんセット>。
改札パンチは愉しいけれど、二十面相とは戦えない!!
そんな訳で、くすぶり続けて何十年。
おかげで、大人になった今でもそれ系統の駄玩具を見るとトキメキが抑えられません。
探偵小説に登場するこまごまとした小道具は、読んでいるこちらの気分をアゲアゲにしてくれる夢のアイテムです。
たとえそれが作り物であっても、物体として実際に所有できたら最高に嬉しい。
乱歩の年探偵団シリーズでおなじみの<BDバッジ>や<少年探偵手帳>はその昔、懸賞用や雑誌の付録として本当に作られたようです。
子ども心をわかっていらっしゃる。
子ども向け作品に限らず、乱歩作品の小道具はどれも魅力的です。
「人間椅子」
「鏡地獄」
辺りの大道具群はちょっと変態チックですが、
小さい物なら、<将門眼鏡>とかのレンズ系にワクワクします。
でも、あえて私はこれを推したい。
「二銭銅貨」…の<ギミック二銭銅貨>を。
この中に、これからの季節に重宝するリップクリームを入れて持ち歩きたい。
用法が現実的でいまいち夢がないかもしれませんが、平凡な日常にささやかなトキメキを忍ばせるのに丁度いいなあと思います。
あと、横溝正史の「悪魔が来りて笛を吹く」に出てくる<例の楽譜>も欲しいです。
フルートが吹ける人に頼んで運指を見たい。
…と、ここまで書いて気づきました。
探偵小説の小道具の話は、そのままネタバレになってしまうことを…。
(失礼しました)