ヘタクソな夢を描いてゆこう
小学校6年生のとき、宮部みゆきにハマって(というほどの数を読んではいないけど)『ブレイブ・ストーリー』を読破した。
その次の年にちょうど映画化して、幼馴染(こいつもまた読破している)とふたりで観に行ったのを覚えている。
本は結構ボリュームも中身も重くて到底子ども向きとは言い難いファンタジー小説だったが、映画は子どもも見やすい内容になっていた気がする。
途中あまりにも端折りすぎて原作読んでなかったらわからないでしょ、みたいな展開もあったのはしっかり覚えている。
その主題歌だったのが「決意の朝に」というAqua Timezの楽曲。メジャーデビューシングルらしい。
中学生というのはおしゃまなお年頃で、CDを買えるということはなんだか大人な気がしていた。
とにかくCDを買うっていうのは相当ハードルの高いことで、すごいことで、ちょっとした自慢になることだった。
(自慢する友だちがいたかどうかはさておき)
絶対音感を持つ同級生は、買えないからとCDショップでなんども視聴して自分でピアノで弾いていた。それはそれですごすぎるけど。
とにかくわたしの中でCDというのものが高尚な存在になっていたので、最初に買うCDは「最初に買うCDらしいものでなくては」と思っていた。
映画の出来については、正直上記の記憶の通り納得がいっていなかった。
中学生ごときが何言ってるんだと今では思う。
絵はキレイだったし、声優もみんなよかったし、総合的には今でも好きなんだけども。
という感想を言ってしまうから、何年経っても性格がただ面倒くさいだけかもしれない。
とはいえ、主題歌がめちゃくちゃ刺さってしまった。
作品にもあっているし、何より自分のどんくさい小中学生時代、つまり当時の自分の「いま」がちょっと肯定されたような気がした。
わたしは特に使い途がなくて溜め込んでいたお小遣いを持って、イオンの最上階にあるCD屋で『決意の朝に』を、おずおずと購入した。
中学生というのは多感なお年頃で、わたしはCDを買っているところ同級生に見られないか心配だった。
『ブレイブ・ストーリー』のキャラでいうとたぶんわたしは美鶴っぽい人間だった。(あらすじは言わないが、ぜひ映画か小説かをみて欲しい)
転校生でもないし、暗い過去もなんもないけど、卒なくて、自分勝手で、友だち全然いないところとかは似てると思う。
そういう世界滅亡したって知らない、みたいな、斜に構えてる中二病みたいな、どうせわたしなんて…っていう、投げやりな気持ちを、ぜんぶ、否定も肯定もせず包んでくれる感じがした。
そんな『決意の朝に』のCDは一回落としてケースが割れているけれど、いまだに持っている。
過ちも傷跡も 途方に暮れ ベソかいた日も
僕が僕として生きてきた証にして
どうせなら これからはいっそ誰よりも
思い切りヘタクソな夢を描いてゆこう
言い訳を片付けて 堂々と胸を張り
自分という人間を 歌い続けよう
大人になったいま、人生の岐路に立たされたいま。
この歌詞は別の意味でまた刺さる。
未だに。今さら。
自分ではそう思っていないけど、そう言われてしまうこともある年齢で、わたしは夢をみて、それを着実に実現しようとがんばりはじめたところ。
そのやり方は相変わらずどんくさくて、不器用かもしれないけど、変に言い訳なんかせずに、胸を張ってやる。
それが「自分という人間を歌う」ってやつなのかな。
自信はないけれど、なんとかなる。自信だけあるよりいい、と思う。
ときどき壊れたラジカセみたいに頭の中で急に流れ出す。
そうやって応援してくれるこの曲が、やっぱりはじめて買ったCDで良かった。
中学生の自分、よくやったぞ。
志邑でした。
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