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対ロシア金融制裁の効用(12/14)
気づきのきっかけ
日英欧が行った対ロシア金融制裁。効果のほどは?
対ロシア金融制裁の効用
プーチン政権がウクライナに侵攻した2022年2月以降、日米欧を中心とする西側諸国は、ロシアに対して広範な金融制裁を実施した。制裁開始直後、ロシアのルーブル相場は1ドル=140ルーブル近くまで急落し、大きく混乱した。しかし、その後ロシア中央銀行による政策金利の引き上げや、石油・ガス輸出による外貨収入などを背景に、ルーブル相場は持ち直した。ロシアの実質GDP成長率は2022年に制裁の影響で大きく落ち込んだものの、2023年には軍需産業の活発化もあって回復傾向にある。
金融制裁直後のルーブル相場は、侵攻前の1ドル=80ルーブル程度から約75%下落して140ルーブル近くまで急落した。ロシア中央銀行は政策金利を9.5%から20%へと約2倍に引き上げ、輸出企業に対して外貨収入の80%をルーブルに転換することを義務付けた。この結果、ルーブル相場は4月には侵攻前の水準を上回るまでに回復した。
実質GDP成長率は2022年に前年比2.1%減と落ち込んだが、2023年第2四半期には前年同期比4.9%増とプラスに転じた。この背景には、軍需産業向けの生産が前年比で推定30%以上増加したことが寄与している。
当初、金融制裁は「金融版の核兵器」と評されるなど、その効果に期待が集まった。しかし、実際にはロシアは以下の要因により制裁の影響を一定程度緩和することに成功している。
石油・ガス輸出による外貨収入の継続
中国やインドとの取引拡大による制裁の部分的回避
ロシア中央銀行による迅速な金融政策対応
軍需産業への投資拡大による内需の下支え
ただし、長期的には外国投資の減少や技術へのアクセス制限により、ロシア経済の成長力は徐々に低下していく可能性が高い。金融制裁は「兵糧攻め」的な性格を持ち、その効果は時間をかけて顕在化すると考えられる。
P.S
無理やり結論や答えを生み出す必要はない。常に世界は理解の余地を持っているから。