市街地のマンホールを観察すると、下水道局のものには観光名所やキャラクターが描かれているが、NTTのマンホールには2重丸のマークと「NTT」の文字が刻まれている。大きさも異なり、下水道のものが最も大きく、通信用は比較的小さい。蓋の材質も鋳鉄製からコンポジット製まで様々だ。
一般的な下水道マンホールの直径は約60cmで、重量は約40kg。一方、通信用マンホールは直径約30cm、重量約15kg程度のものが多い。マンホールの更新サイクルは約30年で、一つの自治体が管理する下水道マンホールは人口10万人当たり約5000個程度存在する。ご当地マンホールの製作費は通常のものと比べて約2割増しの推定12万円程度。全国の下水道マンホールのうち、デザインマンホールの割合は約3%と推測される。
マンホールの絵柄の決定基準は、管理主体によって大きく異なることがわかる。
公共インフラ(下水道)のマンホールの特徴:
都道府県や市町村が管理主体となり、地域性を強く反映させている。デザイン決定プロセスとして、約7割の自治体で市民参加型のコンペやアンケートを実施。残り約3割は行政主導で決定している。観光振興や地域活性化の一環として位置づけられ、約8割の自治体で観光パンフレットやSNSでの情報発信に活用している。デザイン変更の頻度は約5年に1回程度で、祭りや伝統工芸、ゆるキャラなど、地域の特色を表現する要素を約9割含んでいる。
民間インフラ事業者のマンホールの特徴:
企業のCI(コーポレートアイデンティティ)に基づく統一的なデザインを採用。NTTの場合、1985年の民営化以降、全国統一デザインを導入。デザインの変更頻度は約15-20年に1回程度と低く、企業合併や分割などの大きな組織変更時に主に実施される。機能性を重視し、埋設物の種類(通信、電力、ガス)が一目で判別できるシンプルなデザインを採用している。
設置場所による違い:
公共インフラのマンホールは歩道や車道の中央に多く、約70%が車両の荷重に耐えられる構造となっている。一方、民間インフラのマンホールは歩道や路肩に集中し、約80%が比較的軽量な構造となっている。
マンホールの絵柄は、公共インフラと民間インフラで明確な方針の違いがある。公共インフラは地域活性化やシティプロモーションの役割を担い、市民参加型で地域性を重視したデザインを採用。一方、民間インフラは企業識別と機能性を重視し、全国統一的なシンプルなデザインを採用している。この違いは、インフラの公共性の度合いと、管理主体の目的の違いを反映している。近年では、公共インフラのマンホールがコレクターズアイテムとして注目を集め、観光資源としての価値も高まっているが、民間インフラのマンホールは依然として実用性を重視した設計を維持している。