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【添削】知り合いの書いた小説を添削してみた

知り合いが小説を書いた。
ジャンルは恋愛である。内容はなかなか面白かったが、表現や技法において未熟さが残っていた。
そこで、その小説を預かって添削してみることにした。
以下は添削前と添削後の小説の1部と、添削のポイントを書き留めたものである。ぜひ読んでみてほしい。

〈添削前〉

飛緣魔
人というものはどうしても欲深い生き物なんだよなぁと煙草をふかしながらふと思う。
例えば億万長者になりたいとか、地位や名声が欲しいとか好きなあの人の一番になりたいとか。大きなものから小さなものでどうしても「欲」を持ってしまう。知能を手にした恩恵、いや呪いなのかもしれないなと苦虫を噛み潰したような気持ちになる。
だから、俺が彼女を手篭めにしたいと願うのも望むのも過去に僕らの祖先が知能を手にした恩恵や呪いなのだと言い聞かせる。
彼女と出会ったのは大学1年生の春先の事だった。黒檀のように黒い艶やかな長い髪にキラキラと黄金色に輝いた瞼に長く下向きの眠そうなまつ毛と少し分厚めな赤い唇が印象的な女であった。紫織さんとは大学の喫煙所が出会いだった。時折見かけるよく分からない音楽を痛れ流しながら俯き気味にタバコを吸ってるそんな彼女を眺めるのが俺の日課だった。


〈添削後〉


飛緣魔
人というものはつくづく欲深い生き物なんだよなぁと、煙草をふかしながらふと思う。
例えば億万長者になりたいとか、地位や名声が欲しいとか好きなあの人の一番になりたいとか、私達人間は大なり小なり「欲」を持ってしまう。知能を手にした恩恵、いや呪いなのかもしれない。禁断の木の実を食べて知恵を得たアダムとイブが、その代償として背をわされてしまった原罪のような、「呪い」。だから僕が彼女を手篭めにしたいと望んでしまうのも、きっとその「呪い」によるものなのだろう。
はじめて僕が彼女を目にしたのは、大学に入学して間もない頃のことであった。その女は喫煙所で、どの年代かもよく分からないような聞き馴染みのない音楽を垂れ流しながら、俯き気味に煙草をくわえていた。その頭からは黒檀のように黒い艶やかな長い髪が流れ、キラキラと黄金色に輝いた瞼には、長く下向きでどこか眠たげなまつ毛を携えていた。それからの日々は、時折喫煙所に姿を表す彼女を眺めるのが僕の楽しみになっていた。

〈添削のポイント〉


・「知恵」をある種の「呪い」として考えたのは秀逸な発想だと感じたので、キリストのエピソードを比喩として導入して補強し、「呪い」という言葉を体言止めで使いさらに印象付け
・「どうしても」の後には動詞が続く方が自然に思えたので、最初の文の「どうしても」を「つくづく」に変更
・第一人称として「俺」と「僕」の両方が使われていたので、「僕」に統一
・紫織さんの容姿を描写する文が少し長かったので一部をカット
・「苦虫を噛み潰したような」がここでの表現としてはやや強めに感じたのでカット
・「時折見かける」なのに「日課」なのは違和感があったので、「日課」を「日々の楽しみ」に変更
・「タバコ」と「煙草」が両方使われていたので、「煙草」に統一

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