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【辛口】FF16のストーリーに言いたいこと

私はFF16が好きだ。FF16をDLC込みで2周遊び、トロコンした私の感想だ。素晴らしいグラフィックと音楽には感動させられたし、アクションゲームとしても楽しめ、170時間ほど遊ぶことができた。

しかし、これだけは言いたい。

ストーリーが酷い!

発売前に開発陣があれだけ「ジェットコースターのような体験」「現実の問題を取り入れる」と推していたストーリーは蓋を開けてみると、頻発するお使いクエストと盛り下がる後半のストーリー展開によってジェットコースターは頻繁に脱線してしまうし、奴隷・差別・戦争のような現実問題を取り入れただけで本質的な部分を描かず、最後には有耶無耶にしてしまう始末だし、とにかく不満が沢山ある。

今回はこの問題のストーリーについて話をしていく。かなり辛口の記事になってしまい申し訳なく思っているのだが、主観強めでガッチリ書いたので、最後まで読んでくれるとありがたい。また、ネタバレありとなっているので、そこは注意していただきたい。

FF16のストーリー以外の部分についての感想は、以下の記事で書いたので、気になる方は見てほしい↓



複数の軸を反復横跳びしながら進む半端な物語

今作の物語の問題点の一つとして、複数の軸を設けすぎてしまったことを挙げる。複数の軸を反復横跳びしながら進んでいくため、「この物語で一番描きたいことは何なのか?」という明確なテーマ性に欠ける。そして各軸が非常に半端な形で描写されてしまい、不完全燃焼感が凄い。
例えると、和食を食べたいと思い最高級の料亭に行ったら、和食・洋食・中華のすべてを取り入れたコース料理を提供され、どの料理も中途半端な味付けで、結局どれも満足できない状態になってしまっているようなものだ。
本作の軸は、以下に示すように4つあると思う。

・軸1:復讐劇
・軸2:マザークリスタルの破壊
・軸3:奴隷問題
・軸4:アルテマ


これらの軸が独立して深まることなく、互いに干渉し合いながらも調和せず、結果としてストーリー全体のまとまりが欠けてしまっている。

発売前のPVで一番推されていて、今作を待っていたファンの大多数が楽しみにしていたであろう「クライブの復讐劇」は、物語冒頭で信じられないくらいアッサリ終わってしまう。復讐のために生きる悲しき男であるクライブのダークで血生臭い復讐劇を期待していただけに、非常にモヤモヤした気持ちになる。
と思ったら、いつの間にか、マザークリスタルの破壊と奴隷問題が物語の中心になり、両テーマはゴチャゴチャ混ざりながら、同時進行で進んでいく。その過程で、環境問題や差別問題のような、現実社会にもある社会課題を提起していく。しかし、そういった課題に対するアンサーは全くなく、アルテマの話へと物語は移行する。まるで現実にある社会問題から目を背けるように。「アルテマ」という悪い意味でFFらしいキャラが出てきたときは、「まさかアルテマがラスボスじゃないだろうな」という不安を抱いたが、そのまさかだった。アルテマが物語の中心になったと思ったら、ちょろっと奴隷問題が半端に出てきたりすることもある。そして「なんかよく分からないけどアルテマ倒しとけば全部解決するっしょ」的なノリでアルテマを倒して、気づいたらエンディングが流れている。
今作の物語を一言で表すのなら「中途半端」であろう。

納得感のないマザークリスタル破壊活動

復讐劇があっさり終わった後に待ち構えているのが、この「マザークリスタル破壊活動」だ。エーテルの枯渇により「黒の一帯」と呼ばれる現象が進行し、人々が住める土地が減少し続けている。その原因はマザークリスタルにある――そう主張するシドの意見に賛同したクライブは、世界中のマザークリスタルを破壊する旅に出る。

ここが、まあ酷かった。まず恐ろしいのは、「黒の一帯の原因がマザークリスタル」というシドの主張に、根拠も説得力もまったくないことだ。何らかの研究で証明されたわけでもなく、ただのシドの考えにすぎない。にもかかわらず、クライブは会ったばかりのシドの言葉を鵜呑みにし、何の疑問も持たずに人々の重要なインフラであるマザークリスタルの破壊活動に乗り出してしまう。その結果、大量の移民や戦争が発生。しかも、マザークリスタルを破壊したことで黒の一帯の拡大が止まったという兆候は一切ない。

しかしクライブは、その行動が生む悲劇や犠牲について深く悩むこともなく、自我を失ったロボットのように破壊を続ける。そして極めつけは、ラスボスに対して「人間が自我を持つことの重要性や素晴らしさ」を説くシーンだ。当のクライブ自身が最も自我を持たず、他人の思想に盲目的に従っているというのも、皮肉な話である。

人の教えや考えを疑うことなく受け入れ、テロ活動に走ってしまう。地下鉄サリン事件などもそうだが、本当に恐ろしいことだと思う。本来であれば、シドの主張を裏付ける具体的な証拠や調査があり、それをクライブ自身が確認するプロセスが描かれるべきだった。なぜなら、シドの主張は物事の一側面だけを見ている可能性があるからだ。

例えるなら、地球温暖化が進むと気温が上がり、それによってアイスの売り上げが伸びるとする。そのとき、「アイスが売れれば売れるほど地球温暖化が進むから、この世からアイスをなくそう!」という主張が、シドの主張になり得るのだ。クライブはアイスを排除する前に、「なぜアイスの需要が増えているのか?」「そもそも地球温暖化の原因は本当にアイスなのか?」と疑問を持つべきなのだ。しかし、作中ではそうした思考プロセスが完全に省略され、「シドがそう言っているから正しい」という、あまりにも雑な流れで物語が進んでしまう。これでは、観る側も彼の行動に共感するどころか、不安や違和感を抱くだけだ。

カッコいいキャラなので、クライブ自身の考えに従って歩むさまを見たかった

ボロクソに言ってしまったので少しだけカバーすると、マザークリスタルを破壊した後の人々の生活についてクライブなりに考えている描写があったのは良かった。文明を築いたり、野菜の自家栽培を始めたり、マザークリスタルに頼らない生活を人々が構築していくプロセスがあることで、クライブたちの活動の意味や重要性は掴むことができた。

根本的な部分を全く描かないチープな脚本

今作を遊んでいて一番気になった点がここだ。奴隷・差別・戦争のような現実問題を物語に取り入れた今作だが、そういった重めのテーマ(今も人類の課題となっているテーマ)を扱うのならば、そういった問題の根本的な部分にスポットを当てる必要があると思う。しかし、今作は物語をダークにしたいがために、とりあえず重めのテーマを扱ったようにしか見えない。奴隷や差別に関しては、ただ悲惨な現状を長々と見せつけられただけだし、戦争に関しても、何となく国家間の戦争描写を入れることで、憧れのロード・オブ・ザ・リングのようなスケール観にしたかっただけで、戦争自体は物語の本質に全く関わってこないし、あれだけ複数の大国を出す意味もなかったと思う。特に鉄王国とウォールード王国はあってないようなものだった。

差別や戦争が悲惨で良くないことなのは分かってる。しかし人類史的にも、こんなに文明が発展した今でも、こういった問題はなくならない。それは何故なのか?世界や人間のどういう部分を変えなくてはいけないのか?そういった根本的な部分にフォーカスし、問題提起やクリエイターなりのアンサーを欲しいのだ。でないと、プレイヤーは物語によって考えさせられたり、気持ちが動いたりすることなく、ただ「つまり何を言いたいの?」で終わってしまう。
そして、その中でも特に酷かったのが奴隷問題だ。次項に続く。


酷すぎる奴隷問題の描写

本記事で一番主張したい点がここだ。
今作では、魔法を使えない一般人と、生まれつき魔法を使える奴隷=ベアラー がいる。魔法が使えるという理由でベアラーは差別の対象と見なされ、酷い迫害を受けている。これを見たクライブは、この差別を無くすべく様々な活動をするのだが、最終的な解決法が、マザークリスタルやアルテマを葬り去ることで魔法の存在ごとこの世から消去する というものになっている。私はこの解決法に大きな問題があると考える。何故なら、差別が生まれてしまう根本的な原因を何一つ解決していないからだ。

何故ベアラーは差別されるのか?それは、ベアラーが魔法を使えるからなのか?いや、それは違う。それは単なる表面的な問題であり、問題の本質は「ベアラーという皆と違う存在を受け入れられない人々の心」の問題だ。これは現実社会の問題も一緒だ。肌の色の違い、文化の違い、外見の違い、そういった「違い」を受け入れられないことによって差別は生み出される。ここにフォーカスせず、アルテマを倒したとて、恐らくFF16の世界で差別はなくならないだろう。今度はベアラーではない別の部分での差別が始まるだけだ。

つまり、今作のストーリーは、差別をなくす上で非常に重要な「違いを受け入れる」という部分を描かずに「違いをなくす」ことに焦点を当てたわけだ。実に危険な描き方だ。「肌の色の違いによる差別を無くすために、人類全員の肌を白色にしよう!」と言ってるようなものだ。
もちろん、今作の脚本家やクリエイターの方たちが、そのような危険な考えを持っているとは思ってない。ただ「差別」という今も当事者がいる重いテーマを、FFという世界中の人が遊ぶシリーズで扱った以上、もっと問題と真摯に向き合う必要があると私は思う。テーマの扱い方や深堀方が浅すぎるのだ。

ベアラーであるクライブ。ベアラーとして、ジルと共に故郷に帰るこのシーン大好き


脚本全てにおいて矛盾が目立つ

粗探しをしているわけではないのだが、とにかく脚本における矛盾や違和感が多すぎる。本当にテストプレイしたのだろうか。例を挙げる。

・13年間ベアラー生活をしていたクライブが何故か一般人よりもベアラーのことを知らない。

・13年ぶりにトルガルと再会したのに、まったく嬉しそうじゃない主人公

・クライブの前でジルを処刑すると意気込んだ数分後に、何故かクライブなしでジルを処刑しようとしているフーゴ。

・しれっと変身したトルガル。そこに驚かない一行。そこを深堀しないストーリー。この設定いる?

・魔法を使えるという一般人よりも強い能力を持ったベアラーが何故か奴隷という弱い立場にいる。魔法使えば簡単に反逆できるのでは?

・核兵器的のような存在で国の柱であるディオンに対して、何故かひどい扱いをするザンブレクの王様。そりゅあディオンが反乱起こすでしょ。

・何か秘密のある存在かと思ったら何でもなかったジョシュア。もっと早く合流してくれればよかったのでは?

・再開した際、お互い殺し合ったことについて不自然なほど触れないクライブとジョシュア

・フェニックスゲートなどで出てくるアルテマと、再開前のジョシュアの格好が何故か一緒。服装が同じである必要性が全くないし、むしろ物語を紛らわしくしているだけ。

・召喚獣の力を取られたのに、何故か召喚獣の力を使えるドミナント。特にディオン。

挙げだしたらキリがない。挙げようと思えば、あと30個は余裕で出てくる。恐ろしいことに、これらは物語、世界観の設定の根幹を揺るがす特大の粗ばかりなのだ。粗探しをしようとしなくても、いとも簡単に見つけることができる。もう一度言いたい。本当にテストプレイしたのか?本当に今作はストーリーに力を入れたのか?

好きなシーンだが、その前のフーゴの謎行動(脚本のミス)が痛恨のミス

ゲームに対する不満を述べる際、開発者サイドについて言及することが良いことだと思わないのだが、ごめんなさい。今作ばかりは言わせてほしい。
脚本家の力不足が過ぎる。いや、この脚本にOKしてしまった第三開発自体に問題がある。脚本家でも何でもないただの一般人がフラットな目線で見ただけで、簡単に見つかる粗が多すぎる。
そして、この違和感や矛盾は、開発者の発言にも繋がる。

・「ありとあらゆる世代やタイプの人に遊んで欲しい」と言いながら、無駄にグロ・エロシーンを入れ、シリーズの中で最も多くの人に遊びずらい作風にしてしまう。そこに追い打ちをかけるように、購入しずらいPS5独占販売にし、遊べる人数を更に減らす。

・「製品版では体験版ほど、QTE、ムービーシーンが多いわけではない」、「体験版のシーンが一番暗い」という、製品版を遊んだら誰でも分かる嘘(感じ方は人それぞれなので何とも言えないが)をついてしまう。

とにかく全体的に軸がぶれているというか、違和感しかない。開発者のインタビューを隈なく見て、発売を楽しみにしていた私だったが、大きく失望したのを覚えている。

アルテマという物語を無理やり終わらせるためにあるラスボス

物語序盤~終盤まで、様々な設定や伏線を散りばめながら進む本作のストーリーだが、それらをまとめて処理するために用意されたのがアルテマだと考えている。ある意味、掃除機的な存在だ。しかも、その処理の仕方は酷く、全ての設定を丸投げにして無かったことにしてしまう。ゲームを遊んでいた身としては「途中で脚本めんどくさくなったのか?」と思ってしまった。ここまで伏線が活かされない脚本というのも珍しいのではないか。

そして何よりも、ラスボスとして魅力が全くない。アルテマが関わるストーリー全てがつまらない。何故なら、ここまで物語で築いてきたこと全てと関係なく、単に無理やり繋げただけだからだ。「差別も戦争も、全てはアルテマの暗躍によるものでした」と言われても、「あ、そうですか。じゃあ何でもありじゃん」となってしまう。

例えるのなら、
「色々な謎が散りばめられた超大作ミステリーを見ていたら、途中で作風がガラッと変わり、全ての犯人は突然出てきたお化けでした」
みたいな感じだ。

まぁ、これは私の単なる感想だ。この展開が好みの人がいることも分かる。FFでいうと、FF9のラスボスである"永遠の闇"に似たようなポット出感がある。FF9の場合は、永遠の闇自体がストーリーの本筋に絡んでくることがないため、悪影響が少なかったから良かったが。


まとめ:FF16に対する批判が他のFF作品と違う理由。次のFF待ってます!

ここまでグチグチ言ってきたが、これで良いと思っている自分もいる。何故なら、FFってそういうものだからだ。毎作品、全く作風の異なるものが発売され「ストーリーが酷い」だの「一本道」だの賛否両論が巻き起こる。私自身も、ここ最近のFFには毎度 心をぐちゃぐちゃにされる。

ただ、FF16の場合、他のFF作品と少し違う背景があるところがキーポイントだと思う。というのも、FF15、FF14(初期)、FF13、FF12辺りの炎上は、開発が超難航したり、開発者や脚本家の入れ替わりが起こったり、社内体制の要因によってゲーム側が批判されることが多かった。
しかし、FF16の場合は、吉田Pという敏腕プロデューサーと他のベテラン陣営による指揮の下で計画的に開発が進められた、という最近では珍しいタイプの順調なFFだった。それでも、ストーリーの出来の悪さを中心に、RPGとして不出来、お使いクエスト多すぎ、など批判されることが多い。しかも他作品と比べても、「炎上系Youtuberに炎上させられた」とかもなく、割と的を得た批判が多いように個人的に思う。そして、FF16を作った第三開発部が発売した、FF14の最新拡張パッケージである「黄金のレガシー」も、FF14を愛してやまない長年のファンから割としっかり批判されていたりする。

何を言いたいかというと、ここまで数々の成果を上げてきた第三開発部が、手間と予算と優秀な人材をかけ、社内体制に振り回されることもなく、しっかりと作ったFF16が、しっかりとした理由で批判されているのだ。
これは「作風によって好みが分かれる」「挑戦しすぎた」「開発が難航していなければ」とか、いつもFFを擁護するために飛び交う言葉では片づけることができない重大な問題であり、FF15などの炎上とは訳が違うと私は思う。上から目線で本当に申し訳ないのだが、FF16で生まれた批判が、今後の第三開発部のゲームに活きることを切に願う。

そして、いちFFファンとして、そろそろ賛否両論の賛が圧倒的多数のFFが、ナンバリングで発売されないと困る。個人的に、FF7リメイクシリーズは本当に素晴らしいと思うのだが、それをナンバリングでやってほしい。それもPS5独占など無しで。
次回のFFはどうなるのだろうか。私としては、アクションでもコマンドバトルでもいいし、ナンバリングを止めてしまってもいいし、世界観もファンタジーでも近未来でも何でもいい。とにかく求めるのは「質の高い脚本」それだけだ。


最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
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個人的に、本編よりもDLCの脚本の方が好き

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