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『シビル・ウォー アメリカ最後の日』『ぼくが生きてる、ふたつの世界』など(ネタバレあり)240930-1006

アレックス・ガーランド『シビル・ウォー アメリカ最後の日』(2024)
面白かった!!!!
凄惨な場面には似つかわしいポップな音楽の数々。ちょっとふざけている感じが、内戦とかアホらし……と思わせる。
結構絶望的な映画で、人が無慈悲に殺されるから絶望的なのではなく、人は常に自己中心的であるということが痛いほど伝わってくるから。
作中で唯一、リー・スミス(キルステン・ダンスト)だけは自己欲求と庇護欲との間に揺れ動き、最終的に後者をとってしまうため最低な形で死ぬ。
世の中で生き残るのは当然善人ではない。現実世界で内戦が起きれば、映画的救いなどあるわけもない。今作は主人公も恩師も死ぬ。できる限りリアルに近づけようとしているよね。
ジェシー・プレモンス演じる兵士の存在感が抜群、怖かったよ……。
あの無慈悲な感じが当たり前だよね。既に100と殺している、だったらジャーナリストだろうがなんだろうが、敵だろうが味方だろうが、あんな現場を見られたら殺しておくに決まっているよ。自分の思想に合わない奴ならね(←これが怖い。愛国心とか宗教とか、思想はあるのが厄介なんだよなぁ)。
終始、兵士がいてもそれが反乱軍なのか政府軍なのかわからない仕様にしていて、それが緊張感を生んでいた。
ロードムービーでもありメンタームービーでもあり、ただの戦争映画に終始しないのは流石A24と思いました。


呉美保『ぼくが生きてる、ふたつの世界』(2024)
東京で暮らす五十嵐大(吉沢亮)と、宮城で暮らす母の明子(忍足亜希子)の電話シークエンスが100万点。
電話ごしだと手話は使えない。息子の伝えたくても伝わらない想い、母の話したいけど邪魔しちゃ悪いと気遣う想い、悲痛なまでに伝わってきた。このシーンだけで泣けて泣けて。
物語の締めくくり方もこれ以上ないものに。息子と母は、電車の中で、自然と手話で会話をする。そのあまりに自然な状況に(観客すら)気づかなかったことを、母が息子に伝える。
いい意味でキャラクターを放置していて、それが本物の人生の流れっぽくて大好き。父親も、編集長のユースケ・サンタマリアも、手話仲間も、無理に完結させていなところがいい。
『Coda コーダ あいのうた』(2021)のクライマックスの先の話が描かれている感じ。上京してどうなるか、的な。

『イジメ0の学校』1巻 石川 実 (原著), 西嶋 慶大 (著)
予想する展開と違った。あらすじだけ読むと期待していた分、残念。
学校側も本気でいじめ0に動いている中での自殺だったら面白いのに、学校側がそもそも隠蔽体質で逆説的にいじめ容認みたいな行動をとっているからリアリティは感じられなかった。
いじめっ子が協力者に回る展開は◎。

松枝穂積『ワレワレハ』1巻
女子大生に擬態した異星人・コスモが毎回自分の星の上司に報告する模様が楽しい。友達のいないひかりの親友になるのかと思いきや、二人とも微妙な距離感というか関係性で、それが斬新だと思った。
限りなく進展しない日常系の趣があるので、何か大きな展開が出てくると嬉しいな。

志波由紀『悪魔二世』1巻
これがデビュー作ということで才能凄い…。「デビルマン」想起な設定。
大体シリアスな状況なんだけど独特のユーモアが全開されていて、奇妙な読後感。




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