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中年じじぃの(愉快な)主張vol.33

子供時代について(結婚式の失笑とため息と進化論について)

2024/11/21

私はたぶん、可愛げがない。

でも子供時代はすごく可愛い子供だった。
本当に、〝すごく可愛かった〟のだ。

なぜそんなに断言できるかというと、もちろん写真があるからだ。
そして〝可愛い〟などという主観的なことを、なぜ自信満々にいうかといえば、こんな事があったからだ。

何十年か前に弟の結婚式に出席した時のことだ。
結婚式の常として、新郎新婦の子供時代からの写真が披露される。

弟も赤ん坊のころからの写真が次々スライド上映された。
私は、『いったい誰が他人の赤ちゃん時代の写真に興味を示すのだろう』などと鼻白んでいた。
やがて新郎(弟)が3歳の時の、兄弟3人の写真がでた。
兄(私)5歳、妹1歳と三人で仲良く並んで座る写真だ。

その瞬間、客席から悲鳴があがる。
『お兄ちゃん可愛いー!』
『テレビコマーシャルみたい!』
『どこ?どこに座ってる?今日いるんでしょ!?』

その瞬間、私も悲鳴をあげる。
『やめろ!おれを探すな!おいっ、そこの新婦友人席、全員席次表を置け!』
式場側は、盛り上がったのをいいことに、次のスライドを出さない。
各テーブルの招待客は次々と席次表を見て、新郎親族の席を探す。
私は観念して目を閉じる。

やがて歓声は失笑に変わり、新婦友人席からは、はっきりとため息が聞こえた。
そしてスライドを切り替える音が響いた。

私は目を閉じたまま思う。『あぁ、人のため息って聞こえるんだな。マンガの中だけかと思ってたよ。そして弟夫妻よ、なぜこの事態を予測できなかった。それともわざとか?そうか、幼少時におれがイジメた仕返しか。見事だ、見事な一撃だったよ』

恐る恐る目を開けると、会場の全員が次のスライドを見て、誰も私の席を見ないようにしている。
弟夫婦は、その様子に失笑している。
きっと想像以上の戦績に驚いているのだ。

私はもう一度目を閉じ、今度は5歳の私に語りかける。
『おい、いったいお前にいつ、何があったんだ。なんでお前のような可愛い男の子が、こんなにイカツい男になるんだ。このままだとお前は二、三十年後に、歓声と失笑を一度に食らう羽目になるんだぞ』

私の心の中の5歳の私は、将来を悲観して、心なしか悲しげな顔になった。
悲しい顔をしても可愛い。
あぁ、いったいお前に(おれに)何があったんだ。

全ての動物は、外敵などから身を守る術として、可愛く生まれるらしい。攻撃の意思を削ぐために、そのように進化したらしい。
たしかにあの子は(おれは)襲われないだろうなぁ。拐われることはあっても。

それがいまはどうだ。なんでもかんでも襲って食いそうな顔になったぞ。
ひと拐いもしそうだ。

この状態を進化論は説明できるのかなぁ。


ところで、拐う(さらう)って、いろんな漢字がでてきますね。攫う、浚う、渫う。
よく意味が分からないのもあるけど、使うこともないから調べないけど。

あれ?もしかして、あの5歳のおれって拐われた?
いまのおれは別人?
なーるほど。それなら納得。



 



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