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中年じじぃの(愉快な)主張vol.15

人生初の手術について ②  ※R18  一部、下世話で不適切な表現を含みます(?)

2024/10/10

 前回の続き。

 入院初日を迎えた私は、案内された病室に入った。もちろん料金の安い相部屋だ。

 通院や入院経験がほとんどない私は、むしろワクワクしていた。

 人生初の手術、人生初の全身麻酔、人生2度目の入院だ。(一度目は3年前で、この話は結構長くなるので、そのうち書こうとおもう。私の呑み友達はこの話を面白がるので、私は何度も同じ話をしている。しかし、ひとの生死に関わることを笑うなんて、そのうちみんなに天罰が下るだろうと思っている)

 病室に通された私は、一通り、今後4日間のプログラムを聞いた。
(はいはい、何度も聞きましたよ。まずはカテーテルを通すため、太ももの付け根を剃毛するんですよね。そして手術前後は絶飲食で絶対安静なんですよね。私は昭和の生まれですから、大抵のことは我慢できますけど、まだ他になんかあります?)
という心持ちだった。

 やがて看護師さんが病室に(相部屋なのでその一角に)やってきた。

 看護師の〇〇です。手術前の準備で、カテーテルを通すために、周囲のムダ毛をお剃りします。

 いや、ちょっと待ってくれ。
まず第一に、私の体毛は、何に(誰に)とって無駄なのだ?
あぁ、手術か。
いや、第二に、あなたが剃るのか? あなたはたぶん専門学校だか看護学校を卒業したばかりの、たぶんハタチ前後の女の子ではないのか?
それに「お剃りします」という言葉も初めて聞いたぞ。

 このときほど、〝事前説明〟というものを軽んじた自分を呪ったことはない。

 本当にこの子がおれの体毛を剃るの?
医療行為とはいえ、それって合法なの?
もしかして追加料金とか取られるの?

 やがて彼女は、私のパジャマとパンツをおろすように(しかも恥ずかしげに)要求した。

 私は大人しく従った。
落ち着け、落ち着くのだ。ここで私が恥ずかしがったら、シャレにならん空気になるぞ。

 そして、手術のための事前処置(私にとっては試練)が始まった。

 事前に聞いていた、カテーテルを通すための、太もも付け根の剃毛というのは、いわば発射台周辺の草刈りのようなもので、決して大砲(多少の誇張を含みます)自体とは無関係と思っていた。

 ところが、看護師1年目(たぶん)の彼女は、少し顔を赤らめながら(たぶん)、私の大砲に触れてくるではないか(あぁスミマセン)!

 私の波動砲(大いに誇張を含みます)は、起動する気配を見せた。

 頼む。頼むから冷静でいてくれ、我が波動砲(誇張含む)よ。

 そうだ、こういう場面の常として、小難しいことを考えよう!

そうだ、小数点だ!
3.1415、、、。ここまでしか知らない。
「およそ3」よりはマシだが。

 いや、寿限無だ!
寿限無寿限無、五香の擦り切れ、、、
これしか知らない。
第一、「擦る」はマズい。

 いや、お経だ!お経なら少し分かるぞ!
その刹那、私の頭の中に、妖艶な尼さんが現れた。

 いや、待ってくれ尼さんよ。
ここでもし、私の恐れていることが起こったら、私は病院中の笑いものになり、二度と再び元の生活には戻れないぞ。
神も仏もない、虚無の余生を送ることになるぞ。
きっと看護師一年生は職を辞すだろう。
尼さんよ頼む、頼むから消えてくれ!
悪霊退散!

 やがて剃毛の儀は終わった。
顔を赤らめた(たぶん)看護師一年生は、「それでは、、、」と言いながら病室を出ていった。

 私の波動砲(誇張)は、30%ほど起動しており、それは桜でいえば三分咲き、お風呂でいえばぬるま湯だったが、あわや開戦、となる前に平常時の姿に戻った。

 よくやった! えらい、えらいぞおれ!
そして波動砲(誇)を閉じた沖田艦長、あなたのおかげで宇宙の平和は保たれた!

 あぁ、なぜ剃毛担当は、例えば私の母のようなオバーサンではないのだ?
看護師さんは、みんなこれをやるのか?

 人生どこに落とし穴があるか分からないなぁ。つくづく思いつつ、初日の夜が更けていった。

(その3へ続く)


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