『マーケティング「つながる」思考術』連続講座⑬~正しいマーケティング効果測定のポイント~
効果測定が正しくできていないことによって、打ち手が間違っていることに気付けず予算を浪費してしまったり、施策の効果が上がっていたにも関わらず打ち切りになってしまったりしていては、企業や事業の成長をマーケティングでけん引することは困難です。
今回はマーケティング現場で起こりがちな効果測定における間違いと、正しい効果測定を行うための基本の考え方について解説します。
こんな人におすすめ
マーケティング施策における効果測定に悩んでいる人
マーケティング施策における効果測定のやり方がわからない人
効果測定はなぜ難しいのか
マーケティングのデジタル化によって把握できる数値は確かに増えましたが、なぜそのクリックがされたのか、それ以前になぜ関連するキーワードが検索されたのか、検索順位が低いのになぜクリックされたのかを明らかにすることは今も困難です。
たとえば、過去のブランド体験やテレビCM、友人からのクチコミがキッカケだったかもしれません。つまり、売上につながったかもしれない要素や考慮しなければいけないことを挙げればキリがありません。
このように、売上につながった理由を一から百まですべて明らかにすることはそもそも不可能です。
効果測定に臨むときの心構え
マーケティングの効果測定に向き合うためには以下の二つのポイントを押さえておく必要があります。
効果測定にもお金と時間がかかる
正確な効果測定ができないからこそ議論と合意が大事である
まず、当然のことですが効果測定にもお金と時間がかかります。そして、精緻に正しく行うとすればするほど必要になるお金と時間は増えます。一方で、残念ながら効果測定のために多額の予算と時間を割くことは多くの企業で難しいです。とはいえ、実務の中で正しく効果を測定し、評価し、改善することを求められるのがマーケティングの仕事です。
だからこそ、社内での議論と合意が必要になってきます。
効果測定や改善のために投下できる予算・時間・人員などのリソースは組織によって異なりますが、マーケティングに関わるビジネスパーソンに求められることは完全な効果測定は不可能であるという前提のもと、測定できる範囲で何を指標とするか、どういった方法でそれらを明らかにするのかということを、共通言語で会話しながら議論できるようになることです。
ここからは、マーケティングの現場で行う効果測定におけるポイントを解説します。
ポイント①目的を決める
効果測定を行う際には、その施策は「何のためにやっているのか?」という問いに向き合う必要があります。
施策によって得たいリターンが定義できれば、それを測定する方法も自然と明らかになります。
なお、効果測定を行う際に「知った・理解した・欲しくなった」などのデータを取得する方法は基本的にアンケート調査一択です。なぜなら、その答えは生活者の頭の中にしかなく、直接聞かなければ把握することはできないからです。
ポイント②KPIとKGIは分ける
ある施策を実施して結果が得られたとしてもモヤモヤが解消されない事があるはずです。つまり、「これらが結果として出たから、何だったの?」という場合です。
これは、KGIとKPIが分かれていないことによって起こります。
KGIはほとんどの場合、想起率や好意度、購入意向、BtoBの場合は信頼度などが該当します。ポイント①における目的を決めるということはKGIを決めることとほぼ同義です。KGIとKPIの関係を明示することを心がけましょう。
ポイント③費用対効果と投資対効果は区別する
取り組んでいる施策に投じた予算は費用なのか投資なのかを分けて考えてみましょう。
費用は始めたらすぐに効果が出る一方で、やめたら効果が出なくなるものです。デジタル広告やダイレクトメール、チラシなどが代表的です。
すべての施策を費用対効果で評価してしまうと、時間をかけてブランド形成に貢献するものや、「そのうち客」に向けたアプローチを続けることができなくなってしまいます。
一方で、中長期的に効果を発揮させたい施策だからと振り返りをしないわけにはいきません。だからこそ、冒頭で述べたように施策の評価について斜位内での議論や合意形成が欠かせません。
ポイント④売上をゴールにしない
売上は変数が多く、一つの施策のみで達成できるものではないことから施策の効果測定指標とすべきではありません。
上の図は、売上が綱引きのようになっていることを表した図です。「売上」という矢印は、その他の「広告」「価格」などの他の力の相対によって引き上げられた結果に過ぎず、「売上」を直接引き上げる方法はなく、競合の力によって売上を下げようとする力が働きます。
売上は最終的なゴールとして定め、自分達が関わっている組織や施策によって目指すべきKGIを正しく設定する事が欠かせません。KGIとすべきなのは、その指標が改善すれば売上が上がるだろうとされる指標であり可変であるものです。
ポイント⑤診断と処方を一致させる
最後のポイントは、診断と処方が一致していなければそもそも施策を行う前から想定した結果を得ることは難しいということです。
マーケティング課題を正しく診断して、その症状に最適な処方を選ぶ事が効果測定を行う以前に重要なポイントであることを押さえておきましょう。そのためには、どの処方がその症状に効くのかを理解できている事が欠かせませんし、それについて社内で共通言語が作られている事が求められます。
まとめ
完全な効果測定は不可能であり、目に見える指標だけに変調してしまうのは危険である。
効果測定を行う際は、その施策によって得たい事は何かをあらかじめ定めておく事が欠かせない
すべての施策を費用対効果で測定すべきではない。費用は始めたらすぐに効果が出る一方で、やめたら効果がなくなるもの。投資は効果が出るまで時間がかかるが、やめてもすぐに効果がなくならないもの。
売上は説明変数が多く、単一の施策の結果で達成すことが難しい指標である。そのため、施策の評価指標とすべきではない。
診断と処方が誤っていることは効果測定以前の問題。マーケティング課題を正しく診断し最適な処方を行える事が、正しい効果測定の第一歩となる。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?